ホルベイン・グラニュレーティングカラーズ24色|色見本と塗り方のコツ

なぜグラニュレーションカラーは人気なのか。

昨今大人気のグラニュレーションカラーの新商品、透明水彩の「グラニュレーティングカラーズ」が2024年5月15日にホルベインから発売されました。

なぜ今これほどグラニュレーションカラー(分離色)は熱狂的に支持されているのか、グラニュレーションカラーのどこに人は夢中になっているのか以前からとても興味があったので、実際にホルベインの「グラニュレーティングカラーズ24色セット」を購入して使ってみることで、その魅力の秘密に迫ってみることにしました。

24色セットの全色の色見本レビューと色見本を作りながら気が付いた、ホルベイングラニュレーティングカラーズをキレイに塗るコツ、実際に絵を描くときに相性の良い色の組み合わせや注意点などを詳しく紹介していきますね。

グラニュレーションカラーとは

まずはグラニュレーションカラー(分離色)とは何かについてざっくり説明しましょう。

絵の具は色の材料である顔料と、絵の具を紙にくっつける接着剤の役割をするバインダー(透明水彩の場合はアラビアゴムなど)を混ぜて作られています。

この色の材料である顔料は、粒の大きなものがあったり紙にしみ込みやすいものがあったり、色によって性質が異なります。

粒が大きかったり、粒同士が集まってカタマリになりやすい性質の顔料を含んでいる絵の具は紙に塗ったとき、その粒の大きさや重みで顔料が紙のエンボス部分に沈み込んでしまい、色が均一になめらかにならずザラザラとした粒状に分離して見えることがあります。

こういった特徴のある絵の具の色のことを「グラニュレーションカラー」とか「分離色」と呼びます。

最近はあえて「グラニュレーションカラー」と銘打って新商品が販売されていますが、通常の絵の具セットに入っているおなじみの「コバルトブルー」や「ビリジアン」なども分離するグラニュレーションカラーです。

グラニュレーティングカラーズの色見本

ホルベインのグラニュレーティングカラーズ24色セットの全色の色見本とレビューを紹介していきます。

今回私はセットで購入しましたが、全色単品でも販売されています。

水の分量や紙の種類などによって、この色見本とかなり違う雰囲気が出ることもあると思います。

今回使用した紙はホルベインのホワイトアイビスです。

色の説明は私が個人的に感じたイメージで正確な色相を表した名前ではありません。

画像の色も説明も、あくまでも参考程度にみてくださいね。

WG501 アキクサインコ

ピンク系とオレンジ系の異なる色みの組み合わせで、明るくフレッシュでジューシーな色です。

24色セットの中でダントツに可愛いイメージです。

粒状感は控えめで、異なる色相の組み合わせがキレイな色です。

WG502 ノウゼンカズラ

赤系とイエロー系の色みの組み合わせで、501のアキクサインコがフレッシュなイメージだったのに対し、こちらは塾した果実のようなやや重みのある色合いになっています。

イエロー系の色の部分はプラムの果肉(皮に近い部分)に似ている感じがします。

粒状感は控えめ。

WG503 サクラ

名前の通りの優しくやわらかであたたかみのある桜のイメージです。

咲いている桜の花びらより、桜茶の花びらの色に近いと思います。

粒状感は強く出ます。

WG504 フラミンゴ

オレンジ系にクリムゾン系の赤を感じる組み合わせ。

オレンジは朱色寄りの重みのある色です。

粒状感は強め。

WG505 月食(げっしょく)

控えめに言って血のような色です。

粒状感はかなり強め、何度かサンプルを作り直しましたがおどろおどろしくなりやすく、24色の中で一番扱いの難しそうな色だと感じました。

月食という名前も意味深ですね。

WG511 ススキ

名前のとおり明るい日の光を浴びて輝くススキのような色。

稲穂のような色にも見えます。

画像では色が強く出てしまいましたが、実際はもう少しやさしい色です。

イエローオーカー系の自然な感じで粒状感はやや強め。

WG512 満月(まんげつ)

名前のイメージと違うと叱られるかもしれませんが、昆布のような色です。

おぼろ昆布の色。またはバッテラについている昆布の色に私は見えてしまいました。

粒状感は控えめで色も同系色でとても自然なイメージなので、絵を実際に描くときには使いやすそうです。

WG521 ウグイス

オリーブ系のグリーンとイエローオーカーのようなややあたたかみのあるイエロー系の組み合わせ。

粒状感は普通。

色相の組み合わせが自然で彩度も鮮やか過ぎず低すぎず、使いやすそうな色です。

WG522 ミモザ

彩度の低いブルー系と彩度の低い黄緑系の組み合わせ。

明度は近く色みのちがいがおもしろい。

粒状感は普通ですが色があまり濃く出ないため、見た目にはそれほどザラザラした感じには見えません。

WG523 深い森(ふかいもり)

グリーンと木の葉に光が当たり輝いているようなわずかなイエロー系の組み合わせ。

彩度が高め。

粒状感は普通。

WG524 クジャク

クジャクの羽の色をやや落ち着いた感じにしたイメージ。

ブルー系とオリーブ系、グリーン系の組み合わせ。

粒状感はやや強め。

WG531 大海(たいかい)

ブルー系とグリーン系の鮮やかな組み合わせ。

粒状感は控えめで絵の具がキレイに素早く広がります。

人気の出そうな予感のする色。

実際の色が画像では上手く出なかったのですが、実際は粒状感が目立たず色はもっとキレイです。

WG532 ヒスイカズラ

アクアなブルー系と明るいバイオレット系の組み合わせ。

優しく可愛いイメージで人気の出そうな色。

粒状感は普通。

WG533 宵(よい)

ウルトラマリン系のブルーと明るいブルー系とバイオレット系の組み合わせ。

気品のあるイメージ。

粒状感はやや控えめ。

WG541 クレマチス

バイオレット系と熟れたオリーブのような色の組み合わせ。オリーブ系の色が良い感じに落ち着いて和でも洋でも合いそうなイメージ。

粒状感は普通。

WG542 地球照(ちきゅうしょう)

バイオレット系とローズ系、ブルー系の組み合わせ。

にじみの端にローズ系がフワッとひろがってエレガントなイメージ。

粒状感は強め。

WG543 薄明(はくめい)

ローズ系とピーチ系の組み合わせ。

色味は優しく粒状感はかなり強め。

WG551 暁(あかつき)

赤系とこげ茶、ブルー系の組み合わせ。

錆びた金属のようで色気のあるイメージ。

赤系の色は印象としてはスカーレットのような華やかさを感じましたが、後で絵皿で分離した絵の具を見ると朱色でした。

粒状感は普通です。

WG561 カケス

ブルー系とブラウン系の組み合わせ。

やわらかでロマンティックなイメージ。

粒状感はやや強め。

WG562 朧月(おぼろづき)

ブラック系にわずかにレモンイエローが見え隠れする組み合わせ。

紙にキレイに広がる。

粒状感は控えめ。

WG563 ルリタマアザミ

彩度の低いグリーン系の色味を感じる深い色。

粒状感は普通。

WG564 ハシビロコウ

ブルー系の組み合わせ。

組み合わさったひとつひとつの色には濃く暗い色なのに、淡く広がる不思議な色。

粒状感は強め。

WG571 月夜(つきよ)

ウルトラマリン系とブラック系の組み合わせ。

深みのある洗練されたイメージ。

粒状感は普通で紙の上にキレイに広がる。

WG572 雨夜の月(あまよのつき)

ブラック系とブルー系に温かみをプラスした組み合わせ。

表情のあるブラックのイメージ。

粒状感はやや控えめ。

色々な表情

ホルベイン・グラニュレーティングカラーズの色見本の画像はそれぞれ1枚ずつでしたが、実際は紙の目の荒さ、紙をぬらしておくか乾いたところに描くか、絵の具の濃度が濃いか水が多いかなどでかなり色合いや雰囲気の異なる結果が出たので、色々試して塗ってみてくださいね。

同じ色の絵の具でもかなり表情が変わります。

下の画像はすべて【WG561 カケス】で描いたものですが、水分量などを色々変えるとどれも異なる表情になりました。

グラニュレーティングカラーズをキレイに塗るコツ

今回色見本を作っているとき、キレイに出来たと思うものもあれば汚く見えて塗り直したものもありました。

そのうち何色も塗っているうちにキレイに塗れるコツがわかりました。

求める絵の雰囲気によっていくつも塗り方の正解はあると思いますが、キレイに塗れないと感じるときは参考にしてみてください。

キレイに塗るコツ
  • 紙は水たまりにならない程度に濡らしておく
  • 絵の具は薄めすぎない
  • できるだけ大きな筆を使う
  • 塗るというより色を置く
  • 何度も筆でさわらずに紙と水と絵の具にまかせる

絵の具を後から足すのは必要最低限にして出来るだけ触らないようにすると、自然ににじんでキレイに仕上がることが多かったです。

グラニュレーティングカラーズを使ったワークショップの開催を予定しているので、こちらもチェックしてみてくださいね。

色の組み合わせのコツ

色見本単体で見ているとキレイだなと思っても、いざグラニュレーションカラーを使って絵を描こうとすると、ちょっと難しく感じる人も多いのではないでしょうか。

魅力である粒状感が裏目に出るとムラに見えたりしつこさを感じることもあるので、グラニュレーションカラーは使いこなすのが難しい色でもあると私は感じています。

どうすればこのグラニュレーションカラーの良さを生かした絵になるかを考えてみると、絵に使う他の色との組み合わせが大事だと思います。

グラニュレーティングカラーズの色合わせの例
  • 使う色数を少なくする(もしくはグラニュレーティングカラーズ1色だけで描く)
  • 使いたいグラニュレーティングカラーズの色の色相と近い色で明度や彩度の異なる色を選ぶ

グラニュレーションカラーはクセがわりと強い絵の具ともいえるので、他の色も強いものを持ってくるとしつこくなりやすいです。

特に複数の色みを感じるブレンドがされているグラニュレーティングカラーズは、予め美しく見えるように配色を計算して作られているので、それを邪魔しないような相性の良い色を選び、目立つ色はここぞという部分に少し入れてあげるくらいにするとバランスが良くなると思います。

セパレートカラーになるゴールド、シルバーなどの色を使うのも良いと思います。

グラニュレーティングカラーズで絵を描いてみた

ミラ

グラニュレーティングカラーズのWG571(月夜)を使って絵を描いてみたよ

WG571を主役にして他の色は手持ちの不透明水彩2色を混色し、WG571になじむようにしました

薄く塗ったところはグレイッシュに、しっかりと絵の具をのせたところでは青い色がキレイに現れました

ミラ

次の絵はWG572(雨夜の月)を使いました

髪の毛、服、手袋はWG572だけで描いていますが、1本の同じ絵の具と思えないほど色んな表情が出ました

ミラ

次の絵はWG533(宵)とWG571(月夜)を使いました

他の色はホルベインのガッシュ(不透明水彩)を使っています

不透明水彩は透明水彩としても使えるからとても便利

グラニュレーティングカラーズの楽しみ方

なぜグラニュレーションカラーはこんなに人気があるのかとずっと不思議でしたが、実際にホルベインのグラニュレーティングカラーズ24色セットを購入して色見本を作っているうちに、魅力的な絵の具だなと私も感じました。

1本の絵の具のチューブから複数の色が出てくる魔法のような不思議さは、描いていて楽しかったです。

透明水彩ならではのにじみなども面白く、描くたび違った表情になるので飽きません。

グラニュレーティングカラーズのとても良いと思うところは、たとえ初心者の人でも、普段絵を描くことの無い人でも、絵の具が1本あるだけでかなり遊べるということ。

「絵を描く」ということにこだわらず「色を塗る」というだけでも面白い絵の具でした。

色々な表情で色を塗り、乾いてからペンで文字を入れればお洒落なメッセージカードにすることも出来ます。

レジンと組合わせれば手作りのアクセサリーの素材にすることも出来そうです。

しっかり絵を描きたい人も雰囲気のある絵になって面白いと思います。

ホルベインのグラニュレーティングカラーズは色に付けられた名前も詩的で(どうしてこの名前になったんだろう)と想像するのも楽しく、ただ画材というだけでない価値を感じました。

色のキレイさや素敵な名前など、女性がもらうと嬉しいアイテムだと思うので、絵の好きな友達へのプレゼントにも喜ばれそう

色見本の中にあなたの好みの色はありましたか?

私はWG561のカケスとWG551の暁が好きです。

ちなみに今回は発売日にホルベインショールームで絵の具を購入しました。

ショールームでは画材を買う前にサンプルの絵の具を試し塗りさせてもらうことが出来ます。

そして商品は10%オフで購入することが出来ました。

ホルベインさんのショールームがどんなところかは、こちらの記事でも紹介しています。

この記事が絵の具を選ぶときの参考になれば幸いです。

ABOUT US
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MIRAデザイン画家
絵が上達したい・自分の描いた絵を売ってみたい人へ、上達のヒントや画家活動の悩みの解決方法、画材などについて発信しています。 以前は画廊に勤め毎日絵を販売していました。 現在は師匠と吉祥画を制作販売したりリアル系似顔絵の注文を受けたり、絵画講師をしながら独自の支持体を使って絵を描いています。 ブログに書ききれない情報はメルマガで。 本気で上達したい人向けの水彩画のテクニック講座が気になったら、おトクなオープニング価格のうちに体験してみてくださいね。(好評です) 11月29日~12月1日に大阪で個展を開催。 あなたのお越しをお待ちしています。