ポスターカラーの使い方といえばベタッとした平面塗り、アニメの背景画のイメージが先行していますが、それだけにしておくのは勿体ない絵の具。
安い顔料やバインダーを使った安物の絵の具と思われたり、あっという間に劣化すると思っている方もいるかもしれませんが、メーカーさんによっては質の良い材料を使い、ガッシュ並みの耐久性を実現している高品質なポスターカラーも出ています。
ポスターカラーでないと出来ない技法もあり、透明水彩や不透明水彩、アクリル絵の具とも併用することで豊かな表現を可能にしてくれる絵の具。
そんな便利なポスターカラーの使い方についてご紹介します。
ポスターカラーの使い方
ポスターカラーは水の量を調節することでアクリル絵の具の様なハッキリとした力強い絵も描けますし、水彩画のような柔らかな絵も描ける絵の具です。
ポスターカラーの使い方 ①平塗り
ポスターカラーはもともとはグラフィックデザインがアナログだった頃、ポスター制作の時に色を均一に美しく塗る絵の具として作られたもの。
平塗りはポスターカラーの得意技です。
横方向、縦方向、また横方向といった具合に刷毛で何度か塗り重ねるとムラのないキレイな平塗りが出来ます。
ポスターカラーの使いかた ②グラデーション
平塗りの応用でグラデーションもキレイに描けます。
上の画像は水の加減だけで作った1色のグラデーション。
下の画像はコバルトブルー、ターコイズブルー、ホワイトで作ったグラデーション。
グラデーションを作るときは筆を動かす方向は一方向にして、グラデーションの流れに逆らわないように塗ると上手く描けます
ポスターカラーの使い方 ③ぼかし・にじみ
これは水彩絵の具のウェットインウェットと呼ばれている技法と似ていますが、ポスターカラーで描くときは、絵の具の濃度を透明水彩のように薄めてしまわず、紙の色を覆ってしまうくらいの濃度で行うとキレイでポスターカラーらしい力強い発色のぼかしが出来ます。
ポスターカラーならでは方法として、流れるほどたっぷりの絵の具を使うことで、他の絵の具では出来ないマチエールも作れます。
水彩絵の具でこれをやろうとしたら、ポスターカラーでないとなかなか出来ないのよ
ポスターカラーの使い方 ④ドライブラシ
筆にふくませる水を少なく絵の具を濃いめにして、荒くかすれたタッチで描く方法です。
紙はツルンと平坦なものより凸凹のある紙、筆は硬い毛の筆を使うと表情を出しやすいです。
このかすれを使いこなせると、迫力のある表現が出来ます。
ポスターカラーの使い方 ⑤リフティング
こちらも水彩絵の具の技法とほぼ一緒です。
絵の具が半乾きの時にティッシュやタオル、新聞紙などでおさえると、筆で描けないような面白いマチエールが出来ます。
上の画像はティッシュでリフティングしたもの。
アナログな感じが楽しい!
小さな子供も楽しめそう
ポスターカラーの使い方 ⑥筆以外のもので描く
絵筆や刷毛を使わず、スポンジなど別の物を使って描くことが出来ます。
絵の具が水っぽいと効果が出にくいので、絵の具は濃いめかためにすると上手くいくよ
この画像はスポンジでたたいて描いたもの。
ポスターカラーの使い方 ⑦ドリッピング
ドリッピング、スパッタリングともいうこの方法は、絵の具をふくませた筆をトントンと揺らすなどして絵の具の飛沫を飛ばします。
絵の具の濃度が薄すぎたり濃すぎるとキレイな点にならないので、ほどよい濃度をつかむ必要があります。
大きくランダムに飛ばしたいときは筆で。
金網と歯ブラシを使うと細かい霧のような点々が出来ます。
簡単に雰囲気を出せてキレイで便利ですね
これはごまかしやから、あんまり使ったらアカン
エ…
これはホンマにいるところにチョットだけ使うのがええねん
これにばっかり頼らんと描けるようになりなさい
なんだとか。
ポスターカラーの使い方 ⑦エアブラシ
ポスターカラーはエアブラシとの相性も良いです。
エアブラシだけで描くことも出来ますが、細かな部分の修正やグラデーションを繊細にしたいときなど部分使いでも活躍してくれるので、エアブラシは使えると重宝します。
ポスターカラーの使い方 ⑧他の絵の具との併用
ポスターカラーは他の絵の具とも併用出来ます。
水性なので水彩絵の具と合いますし、アクリル絵の具とも使えます。
アクリル絵の具は乾くと耐水性になるので、ポスターカラーが先で後からアクリル絵の具という順番になります。
ポスターカラーで背景を作って、透明水彩を重ねて描くのも面白いよ
私は作品作りにポスターカラーと不透明水彩を併用していますが、その作品を集めた個展を開催します。
ポスターカラーを使って背景画以外にどんな絵が描けるのか、どういう表現が出来るのか、実物をご覧いただけます。
ご興味があれば、ぜひ見にいらしてください。(2024年の個展は終了しました。)
ポスターカラーの使い方のコツ
使い方のコツ ①絵の具の量
ポスターカラーで絵を描くときは、気前よく絵の具を使って描きましょう。
固形タイプの透明水彩を使っている人が見たらビックリするような量を使って描くことで、ポスターカラーの持ち味がいかせます。
ただし、油絵のように盛り上げるような厚みを出して描くと、絵の具が固まったときにポロっと崩れたりひび割れたりしてしまいます。
キレイに描ける絵の具の濃度は、豆乳からケチャップの間くらいのイメージ
透明水彩と比べるとかなり濃厚ですが、厚みを出すための厚塗りではありません。
お試しで描くならチューブタイプで良いですが、実際に絵を描くのに使い始めるとチューブはアッという間になくなるので、瓶入りがオススメです。
使い方のコツ ②水の量
アクリル絵の具で描いたようなシッカリした着色には水の量を少なめに。
特にフラットなベタ塗りは、水の量が多いとムラが出来やすくなります。
水彩画らしい雰囲気で描くときも、水で薄めるだけの場合は透明水彩で使うよりも水の量は控えめにした方が、綺麗に色を塗ることが出来ます。
水彩用のメディウムを混ぜると透明水彩絵の具のように描けます。(メディウムがなくても水で薄めるだけでも描けます。)
ホルベイン ウォーターカラー メディウム
ニッカー ポスターカラー復活剤
使い方のコツ ③重ね塗りは乾いてから
ポスターカラーは塗り重ねやすい絵の具ですが、下に塗った絵の具が半乾きのうちに塗り重ねると、下の色が溶けてしまいます。
下の絵の具がシッカリ乾いてから塗り重ねましょう。
上から重ねる絵の具は水の量を少なめにします。
水の量を少なめにしても、何度も筆でさわってしまうと下の色がわずかに溶けることもあります。
それをマイナスととるかプラスととるかは人によるかもしれませんが、わずかに溶けて混色されることで画面に統一感が出せるので、私はプラスと考えています。
下の色があまり溶けてほしくないという場合は、ウォーターフォードなどの絵の具の食いつきの良い紙を使うと溶けにくくなります。
使い方のコツ ④白は残さず絵の具で塗る
ポスターカラーで全体的にボリューム感のある塗り方をした場合、白は絵の具で塗る方が残すより全体と調和しやすいです。
白い部分や明るい部分は絵の具を薄めることで表現するのでなく、混色でその色を作って塗って描きます。
透明水彩と比べて、ホワイトの絵の具を使う量がすごく多いよ
チューブだと数回でなくなるかも
ポスターカラーをはじめとした絵の具の混色については、こちらの記事でわかりやすくとても丁寧に解説しています。(保存版)
絵の具と道具について
絵の具の使い方
ポスターカラーは使う分だけパレットや絵皿に出して使います。
パレットに残った絵の具は乾燥すると固まりポロポロになるので、パレットは毎回洗います。
一度固まった絵の具は、水でといてもキレイにのびません。
瓶入りのポスターカラーの使い方
瓶入りで使うことの多いポスターカラーは、水気のないペインティングナイフでとって使います。
ペインティングナイフをキレイにふき取っていないと他の色と混ざったり、水気が瓶に入るとカビが生えてしまいます。
少量のアルコールを入れておくとカビにくいようですが、ナイフの水分さえきちんと拭いておけば、そうそうカビません。
…というのは私が長く使ってきたターナー製のポスターカラーの場合の話ですが、ニッカーさんの動画などを見ると筆を瓶にドボンとつけて絵を描かれています。
ニッカーさんの場合はアニメの背景画用に使われてきたこともあり、素早く描くためにドボンして描いても大丈夫なように防腐剤が入っているようです。
使い終わった後きちんと蓋を閉めていなかったり、長期保管していると絵の具が乾燥してきて、瓶の外から見たとき絵の具がひび割れているのに気付くことがあります。
練りがかたくなり始めていても、メディウムを混ぜることでやわらかく戻せますが、カチカチになってしまうと使えなくなります。
ポスターカラーに合う筆
筆についてはこちらの記事に詳しくまとめました。
水彩絵の具用の筆が合いますが、私は日本画用の筆で描いています。
わりとどんな筆でも描ける絵の具ですが、紙に塗るときの感触が繊細な絵の具なので、ナイロン製の筆より天然毛の筆の方が描き心地は良いと思います。
ポスターカラーが得意なムラのない塗り方をしたい場合は、平筆か刷毛を使います。
ポスターカラーに限らず、絵を思うように描くためには刷毛が必ず必要になるときが来ます
ポスターカラーに合う紙
重ね塗りするときに下の絵の具があまり動かないように、水がよくしみこむ絵の具の食いつきの良い紙がオススメです。
ラングトンやウォーターフォード、モンバルは描きやすかったです。
ワーグマンやヴィフアールも特に問題なく使えました。
ポスターカラーで描いた絵の保存方法
ポスターカラーで描いた絵はそのままだと、上に紙を重ねて保管したとき、摩擦で上の紙に色がついてしまいます。
完成したらフィキサチーフをかけておくと色落ちを防げます。
ガッシュ並みの耐久性のあるポスターカラーも出ていますが、色あせが心配な場合はホルベインのUVグロスバーニッシュ(ツヤありタイプ)、またはUVマットバーニッシュ(ツヤ消しタイプ)がオススメです。
まとめ
ポスターカラーは水彩絵の具なので、水でといて使います。
今まで透明水彩を使ってきた人の場合、使う水と絵の具の分量がかなり違うので驚くかも…
ポスターカラーに限らずどんな絵の具でも、感覚的なものは言葉で聞こうと動画を見ようと、自分で描かなければ覚えることが出来ないもの。
基本的にメディウムなど使わなくても水さえあれば描ける絵の具なので、難しく考えず絵の具と遊んでいるうちに、キレイに描ける絵の具と水の量はつかめると思います。
他の絵の具より安く手に入り、たっぷり使えるのもポスターカラーの良いところ。
失敗を恐れず、どんどん描いてみてくださいね。
ポスターカラーと似ている不透明水彩についてはこちらで詳しく説明しています。
広い面積を塗るときは刷毛を使い、狭いパレットよりも絵皿でひろびろと色を作ると描きやすいよ