ポスターカラーが実はかなりオススメ画材な理由|特徴や耐光性について

ポスターカラーとは初心者にもプロにも使いやすくてキレイに描ける、そのうえ安いという良いことだらけの絵の具、ということが思いのほか知られていません。

ポスターカラーとはどんな絵の具なのか、その特徴やどう優秀なのか、気になる耐光性についてメーカーさんに直接確認したこと、用途別のおすすめのメーカーについても解説します。

ポスターカラーとは

ポスターカラーとは不透明水彩絵の具の一種で、色の材料である顔料と顔料を紙に接着させるための材料にアラビアガムやデキストリンなどを使ったマットな質感の高発色な絵の具です。

実際に使った感覚としては、不透明水彩のガッシュに比べて絵の具の粘り気がやや少なく、なめらかでありながらもサラッとのびます。

ミラ

ガッシュとよく似ていますが全く同じものではないため、ポスターカラーでないと出来ない表現があります

学校の美術の教材として使われたり、アニメの背景画の制作に使用されていることで広く知られています。

illustratorやPhotoshopなどがなかった頃、デザインがアナログだった時代のデザイナーはポスターカラーを使っていました。

教材や特殊な職業で使われてきたイメージもありますが、ポスターカラーは絵画の作品制作にも使いやすいオススメの絵の具です。

ポスターカラーで背景画やイラスト以外にどんな絵が描けるか気になる方は、個展の原画を見にいらしてください。

ポスターカラーの特徴 ①発色が良い

ポスターカラーは不透明で発色が良く基本的に厚塗りで描かれるため、水彩絵の具でありながら重厚な存在感のある絵を描くことが出来ます。

ポスターカラーの特徴 ②塗り重ねやすい

ポスターカラーは不透明な絵の具のため、暗い色の上に明るい色を塗り重ねることが出来ます

ただし耐水性ではないので、乾く前に塗り重ねたり上に塗る絵の具の水分量が多いと、下の層の絵の具が溶けて混ざってしまいます。

ポスターカラーの特徴 ③ムラなく塗れる

絵の具がなめらかによくのびるので、広範囲もムラなく均一にキレイに塗ることが出来、グラデーションも美しく描くことが出来ます。

ポスターカラーの特徴 ④キレイににじむ

色を均一に塗るだけでなく、水彩絵の具らしいにじみを使った描き方も出来ます。

ポスターカラーは「ベタ塗りの平面的な描き方をする絵の具」と思っている方も多く、この画像のような作品を「ポスターカラーで描いた」と言うと驚かれることも珍しくありません。

ポスターカラーの特徴 ⑤描きやすい

ポスターカラーは水彩絵の具なので、絵の具と水だけで描くことが出来て扱いがさほど難しくなく、絵を描く初心者の方でも描きやすい絵の具です。

ポスターカラーの特徴 ⑥値段が安い

他の絵の具と比べて値段が安く、瓶入りでも販売されるなど、絵の具をたくさん使って描くときにも重宝します。

値段が安いからといって粗悪な絵の具ということはなく、むしろ描きやすくて発色もよい絵の具です。

ミラ

ケチケチせずにたっぷり使えて惜しみなく失敗出来るので、SNSに毎日絵を描いて投稿したい方や沢山描いて練習したい方にもオススメです。

おすすめのポスターカラー

ターナーのポスターカラー

どこの画材店に行っても大抵置いてあるのがターナーのポスターカラーです。

色の純度が高く発色がキレイです。

ターナーのポスターカラーは私もずっと愛用していますが、よく使う場合はたっぷり使える40mlの瓶入りがおすすめです。

使用頻度が高いホワイトだけは40mlではあっという間になくなるので、250mlの瓶入りを買っています。

使用感としてはのびの良さはもちろんのこと、筆に当たる感触が繊細で軽く、描きたいと思った筆の動きに素直に応じてくれるので、とても描きやすいです。

ニッカーのポスターカラー

ニッカーのポスターカラーは色数が全77色と豊富で、絵の具ののびが良く、体質顔料をあまり使っていないことやアラビアガムの純度が高いため、ガッシュ並みの対候性があります。

アニメの背景画に使われていることでも有名です。

私が普段よく買いに行く画材店には置いていなかったため長い間ご縁がなかったのですが、ターナーで買えなくなってしまった色などをニッカーで購入してみたところ、ターナーとは使い心地がかなり違うと感じました。

ポスターカラーの特性と水彩絵の具の特性、両方ともキレイに出せる絵の具です。

実際に使った使用感をこちらの記事にまとめています。

ポスターカラーの高級品とされるデザイナースカラーについてはこちらの記事でご紹介しています。

教材用のポスターカラー

サクラクレパスのポスターカラー

サクラクレパスからは様々なタイプのポスターカラーが出ていますが、学用品としてのイメージが強いです。

一般的な瓶入りタイプ(全52色)の他、ポスターカラージュニア、普通の水彩絵の具ならはじいてしまうペットボトルにも描ける工作ポスターカラーという学校など大人数で共同で使えるような大容量タイプも出ています。

私は以前、いつも使っているターナーのポスターカラーのブラックが切れてしまったときに、慌てて近所の文具店に買いに行ったことがあるのですが、画材店ではないのでポスターカラーはサクラクレパスのみ数色申し訳程度に置いてあるだけでした。

ブラックは手に入り実際に使ってみた感じとしては、ややもったりとした質感でした。

色はクリアな漆黒という感じではなく乾くと僅かにくもる感じがしましたが、私の場合はブラック単体でベタ塗りすることはなく他の色と混ぜて彩度や明度を落とすために使っているので、特に問題なく使えました。

”色彩教育をテーマに開発された”というメーカーさんの説明通り、本格的な作品制作というよりは学校教育での使用に向いている絵の具なのだと思います。

ぺんてるのポスターカラー

ぺんてるのポスターカラーにも一般的な瓶入りタイプ(ポスターカラーU 全28色)もありますが、クラス用という子供でも扱いやすいデザインのチューブタイプや大容量タイプの商品が出ています。

ポスターカラーの耐光性について、ニッカーさんにきいてみた

WEB上のブログや掲示板には「ポスターカラーは色褪せする」「アニメなどのデータにするものに使うもので絵画作品の制作には向かない」といったような書きこみを時々目にします。

絵画の古い技法書の中でも、ポスターカラーの耐久性について「信頼できない」といった表現をされているのを目にしたことがあります。

ミラ

それ、ほんまに?

どう見ても色褪せてないねんけどなぁ

私は10年ほどポスターカラーを愛用しており、UVカットの額装にするなど特別なこともせず額縁に入れたものをアトリエに飾りっぱなしにしていますが、今のところ特に色褪せが気になったことは一度もありません

私の師匠にいたっては以前、50年ほど前にポスターカラーで描いて陶芸家の友人にプレゼントした絵がキレイに残っていてびっくりしたと言っていました。

師匠

50年は大丈夫や

でも直射日光が当たるところはわからん

ミラ

そんな大きなこと言って大丈夫ですか…?

でも色褪せのクレームなんて、お客様から一度もいただいたことないし…

私はポスターカラーから不透明水彩に完全移行しようか迷ったこともあったのですが、ポスターカラーだからこそ出来る描き方、他の絵の具では上手くいかない技法というのがあり、やっぱりポスターカラーも使い続けたいと思いました。

ミラ

そうだ、メーカーさんに直接聞こう

ネックとなっていた耐光性について、ポスターカラーを作っておられるニッカーさんに直接問い合わせてみました。

すごく丁寧でわかりやすい親切なお返事をいただいたので、ブログでご紹介しても良いか尋ねて許可をいただきました。

こちらにニッカーさんからのお返事の一部をご紹介します。

ニッカーさん

弊社(ニッカー)ポスターカラーの耐光性につきまして、一般的な水彩絵の具とほぼ同等となっております。

ローズ系の色など、耐光性の弱い色もございますが、同様に他メーカー様の不透明水彩も耐光性が強い色もあれば、弱い色もあります。

ミラ

やっぱり…

ニッカーさん

水彩画家さんや版画の作家さんで弊社(ニッカー)のポスターカラーを使い、作品を販売されている方がいらっしゃいますが、現時点で色が退色したというご報告はいただいておりません。

ミラ

ええ、ええ

今までポスターカラーをたくさん使ってきたけど、色褪せは気にならなかったもの

ニッカーさん

弊社(ニッカー)のポスターカラーで制作された過去のアニメの背景画の原画展などで、50年ほど前の作品が展示されることがありますが、色褪せた印象はありませんでした。

ミラ

また50年ってワードが出たわ…

ニッカーさん

ですが、直射日光が当たる場所に作品を飾ると、耐光性の強い色も退色していくタイミングが早まります。

ホルベイン様がUVカットのスプレーを作っております。

こちらを使われると退色が始まるまでの時間を延ばすことができると考えております。

ミラ

なんて誠実で親切なご対応…

ニッカーさん

マットタイプは作品の色合いがやや明るくなる可能性があり、グロスタイプは色合いに深みが出ます。

とのことでした。

水彩絵の具には耐光性の強い色とそうでない色がありますが、耐光性が弱いと言われているローズ系の色のポスターカラーも実際に使ってきた実感としては、退色を感じていないので(以前から使ってきたのはターナー製)、この耐光性の基準自体がそこそこ厳しく設定されているのではないか、とさえ思います。

私の使ってきたターナーのポスターカラーと、ニッカーのポスターカラーについては、実感として室内で直射日光が当たらない場所に普通に飾っておくのには、色あせの心配はあまりないかなと感じています。(他のメーカーさんの商品に関しては詳しいことはわかりません)

耐光性の弱い色を水でシャブシャブに薄めて描いた場合はどうかわかりませんが、そういう描き方をしたい場合はそもそも透明水彩の方がオススメです。

作品の置かれていた環境により、どのくらいの期間もつかは変わると思います。

退色が心配な場合はUVカットスプレーをかけたり、UVカットアクリルでの額装にするのがオススメです。

ミラ

色あせっていうとみんな絵の具のことばかりに目を向けがちだけど、色あせしやすい直射日光に当たるところに額縁を飾ったら、フレームや紙だってヤケてしまいます

大切な家具を直射日光の当たるところに置かない方が良いのと同じことですよ

耐光性についてはポスターカラーやガッシュという絵の具の種類ではなく、絵の具に使われている顔料の質によって変わるものなので、メーカーごと、色ごとに違いがあると考える方がリアルではないかと思います。

ニッカーさんのポスターカラーの高級版絵具であるデザイナースカラーについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

まとめ

ポスターカラーとはムラが出来にくく塗り重ねが出来るなど、水彩絵の具の中でも比較的難しくなく扱いやすい絵の具なので、絵の初心者の方にもオススメ出来る絵の具です。

私自身は不透明水彩絵の具や日本画の水干絵具と併用したりしています。

水彩らしいにじみも活かせますし、アクリル絵の具のようなしっかりとした着色も出来るのに、絵の具と水だけで描けるというのは本当に使いやすく、手軽で描きやすいです。

ポスターカラーは広範囲を大胆に塗ることも出来ますし、繊細な筆の動きにもよくついてくるため細かな描き込みもしやすく、様々な表現が出来る絵の具です。

そして安い

ポスターカラーとは、絵が好きで沢山描きたいという人にとてもオススメの絵の具です。

アニメの背景画用というイメージにとらわれず、もっと気軽に使ってみてくださいね。

ポスターカラーの描き方についてはこちらの記事をご参考にどうぞ。

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MIRAデザイン画家
絵が上達したい・自分の描いた絵を売ってみたい人へ、上達のヒントや画家活動の悩みの解決方法、画材などについて発信しています。 以前は画廊に勤め毎日絵を販売していました。 現在は師匠と吉祥画を制作販売したりリアル系似顔絵の注文を受けたり、絵画講師をしながら独自の支持体と不透明水彩、金箔などを使って絵を描いています。 ブログに書ききれない情報はメルマガで。 一生役立つ水彩画のテクニック講座が気になったら、おトクなオープニング価格のうちに体験してみてくださいね。 2025年2月、大阪堺筋本町の誠華堂にて展示。