水彩絵の具とポスターカラーは、どう違うのか。
ポスターカラーも水彩絵の具の一種ですが、「透明水彩」や「不透明水彩(ガッシュ)」として販売されている絵の具とは少し性質の異なる絵の具です。
ザックリとした考え方としては、同一メーカーさん内でポスターカラー以上に良い顔料などを使っている(可能性の高い)絵の具が水彩絵の具、と考えても良いかと思います。
同じ「ポスターカラー」という名前の絵の具でも、メーカーさんによって材料や品質が異なっているため、こちらの記事で「水彩絵の具の原料はこれで、ポスターカラーの原料はこれです」と明言することは避けようと思います。
その代わり、実際に絵を描いてみたときに、水彩絵の具とポスターカラーではどんな違いがあるのか、というリアルな使用感についてお伝えしようと思います。
もくじ
水彩絵の具とポスターカラーの違い
水彩絵の具には透明、不透明がありますが、ポスターカラーは不透明水彩の仲間となります。
水彩絵の具とポスターカラーの違い ①ムラと表情
ポスターカラーがムラの出来にくい絵の具だということは、よく知られています。
それでも不透明水彩の一種という意味では似たような使い心地ではないかと思い、いつもポスターカラーで作っていた背景を不透明水彩(ガッシュ)で塗ってみたことがあります。
すると絵の具を濃いめに丁寧に塗っても、わずかな塗りムラが残ってしまいました。
不透明水彩(ガッシュ)は厳密には、色によってしっかりとした不透明色もあれば半透明な色もあり、半透明色の不透明水彩(ガッシュ)の場合、マットなムラなしの面を塗るのは、ちょっと難しいと感じました。
逆に水を多くしてにじませたときは、水彩絵の具の方がキレイに表情を作りやすかったです。
水彩絵の具とポスターカラーの違い ②容量
水彩絵の具はあまり大きなチューブが販売されていません。
よく使うホワイトなど限られた色のみ、大きめのチューブも出ていますが、ポスターカラーは瓶入りでも販売されています。
これは私の性格にもよると思いますが、チューブの水彩絵の具をちょっとずつパレットに出して使うと丁寧に細かく描きがちですし、瓶入りのポスターカラーからたっぷり絵の具を出して使うと大胆に描ける気がします。
水彩絵の具とポスターカラーの違い ③質感
実際に絵の具を紙に塗った時の感触ですが、水彩絵の具は水でスッと溶けて消えてしまうような感じがあります。
ポスターカラーの場合は非常に細かいのでザラっとはしませんが、粒子が消えずに残る感じがします。
例えば、焼きたてのトーストにバターを塗ると溶けてスッと消える感じが水彩絵の具、同じく焼きたてのトーストにピーナッツバターを塗ったら溶けるけど、少し溶け残る感じがポスターカラーの感触に似ているかもしれません。
ごくわずかな違いで気にするほどでもなさそうですが、筆が紙にあたる感触は水彩絵の具の方がなめらかでノビも良い気がします。
不透明水彩もポスターカラーも乾くとマットな質感になりますが、不透明水彩の方がややしっとりとした感じ、ポスターカラーはよりマットな感じがします。
メーカーさんによって展色材(接着剤)の成分に違いがあるので、質感はメーカーさんごとの違いが多少出ると思います。
水彩絵の具とポスターカラーの違い ④乾いた時の色
ポスターカラーは絵の具を塗っている最中(ぬれているとき)と乾いたときでは、色の濃さが変わります。
乾くと全体的に白っぽくなります。
水彩絵の具の場合はポスターカラーほど色味は変わりません。
水彩絵の具とポスターカラーの違い ⑤値段
材料による違いと思いますが、透明水彩や不透明水彩絵の具と比べるとポスターカラーの方が安い値段で買えます。
安い=悪い絵の具ということでもないようで、じゅうぶん絵画の制作に使える絵の具です。
水彩絵の具とポスターカラーは混ぜて良い?
ポスターカラーに不透明水彩を混ぜ、いわゆる混色をしてみたことがありますが、色としては特に分離することもなく使えました。
ただ、不透明水彩が半透明色の色だったため、若干ムラが出来ました。
これは使う色やそれぞれの絵の具の比率、塗るときの絵の具の濃さにもよると思います。
厚塗りで絶対ムラは嫌だという場合は、混ぜない方が良いと思います。
透明水彩では昨今分離色が人気ですが、不透明水彩にもポスターカラーにも分離色はあり、透明水彩の分離色と同じような色は分離色の可能性があります。
この分離色の場合は、水彩絵の具でもポスターカラーでも、パレットでキレイに混ぜたつもりでも、塗ると乾くまでに分離してしまうということは起こります。
絵の具を混ぜるのでなく、絵の中で水彩絵の具とポスターカラーを併用するというのは、問題ありません。
まとめ
透明水彩、不透明水彩、ポスターカラー、どれも水彩絵の具の仲間ですが、それぞれ出来ることが少しづつ異なります。
不透明水彩(ガッシュ)は実際に使ってみると完全な不透明でない色もあり、ポスターカラーと比べると水っぽく感じます。
色によっても絵の具の広がり方に違いはありますが、おおむね、水でぼかしたときにキレイに表情を作りやすいのは水彩絵の具、ムラのないマットな表現にはポスターカラーが向いていると思います。
どの絵の具が優れているということでなく、用途に合わせて使い分けると便利だと思います。
広範囲でムラになってほしくない部分を塗るときや絵の具を大量消費するような技法、とことんマットな質感にこだわる場合はポスターカラー、メインのモチーフをボリューム感を持たせて描き込むのには不透明水彩(ガッシュ)、淡くしておきたいところは透明水彩にして使うなどなど。
実際に使ってみて仕上がりの雰囲気を見て、自分の描きたいものが表現できる絵の具を選ぶのが間違いないとは思います。
私の場合は用途に合わせてポスターカラーと不透明水彩を使い分けながら、作品を制作しています。
個展では実物をご覧いただけますので、これらの画材の併用でどんな絵が描けるかご興味のある方は見にいらしてください。
私がポスターカラーを選ぶことになった理由は、こちらの記事で詳しく説明しています。