絵の具の混色のきほんとコツ|混色の仕方と注意点・混色で作れない色

手持ちの絵の具でどうやったら出したい色を作れるのか。

絵の具の混色は慣れていないと難しく感じるかもしれませんが、混色のコツをつかむと(特に不透明水彩やポスターカラー、アクリルガッシュなどの不透明色では)少ない色数の絵の具でも自分の作りたい色を自由自在に作れるようになります。

ミラ

私は1枚絵を描くのにたいてい絵の具は10色も使っていません

基本的にチューブからそのままの色は塗らず、ほとんどすべての色を混色で作ります

どうしたら混色に慣れるかというと、むずかしく考えなくてもしょっちゅう自分の持っている絵の具を混ぜて遊んでおくと自然におぼえられます。

これは料理とよく似ていて、いつもレシピを見ながら砂糖を大さじ1とかやっているとなかなか料理をおぼえられないけど、冷蔵庫にあるものでチャッチャと作るような人は、レシピがなくてもはじめて作るものでも良いあんばいに美味しく作れたりするのと同じようなことです。

そうは言ってもなかなか作りたい色にならないとか、なんか法則がないかとか、作りたい色に混色するコツがないのかと言えばそれはあります

自分で手を動かしておぼえるにしてもコツを知っていれば、効率よくおぼえることが出来そうです。

絵の具の混色のきほん

混色のコツを知りたいという方はまず、絵の具の混色の基本となる色の基本についてザックリと頭に入れてください。

今回の記事ではターナーデザインガッシュ(公式ホームページにとびます)を使いながら説明していきます。

混色と色相の関係

赤・青・黄色のような色みのことを色相と言います。

ミラ

メーカーさんによって多少ちがう色が入っているけれど、12色くらいの絵の具のセットを買うと色相の基本的な色が入っています

この中に描きたい色がないときは、混色して作ることになります。

無彩色・有彩色・純色

絵の具セットの場合はそこに白と黒も入っていますが、このふたつには青や赤などの色味がないので無彩色と言います。

白と黒を混ぜたグレーも無彩色に含まれます。

無彩色に対して赤・青・黄色などの色味のある色は有彩色と言います。

絵の具の基本セットに入っている赤や黄色などの「まっかっか」「まっきっき」のようなにごりのない鮮やかな色を純色と言います。

混色と彩度の関係

色の鮮やかさを表すものを彩度と言います。

「まっかっか」の純色のように鮮やかな色は「彩度が高い」と言い、パステル系のうすい色やくすみカラー、黒っぽい色などは「彩度が低い」と言います。

基本的に絵の具は混色すると色がにごるので、彩度は純色よりも低くなります。

例えば赤の絵の具に他の色を混色する場合、赤にほんの少し別の色を混ぜただけなら鮮やかさはわりとキープ出来ますが、赤に混ぜる色の数や量が増えるにしたがい鮮やかでなくなっていきます。

ミラ

絵の具は混色するとにごります

混ぜれば混ぜるほどにごるよ

混色すると色がにごるというとなんだか悪いことのように聞こえるかもしれませんが、絵を描く人の好みというか作風次第です。

私は自然な色みが好きなので、わざと混色していつも彩度をおとして描くようにしています。

混色と明度の関係

色の鮮やかさを彩度と呼ぶのに対して、色の明るさを表すものを明度と言います。

パステル系のような明るい色は「明度が高い」と言い、ダークな色は「明度が低い」と言います。

純色に白を混ぜれば混ぜるほど明度は高くなり、黒を混ぜれば混ぜるほど明度は低くなります。

白や黒は無彩色なので、混色すると結果的に明度だけでなく彩度も低くなります。

ミラ

白と黒の両方を混ぜたグレーを使うとくすみカラーを作りやすくなります

絵の具の混色の基本

今手元にある絵の具で出したい色を作る。

そのためには絵の具と絵の具を混ぜて色相と彩度と明度を調節する

これが絵の具の混色の基本です。

ミラ

色みを変えるには異なる色相の絵の具を、

明度を変えるには白や黒を、

絵の具を混色することで彩度が変化しますが、より彩度をおとしたいときにはさらに白と黒(グレー)を加えます

絵の具の混色のコツ

混色のコツというか、混色の仕方の基本の考え方です。

色相・明度・彩度を調節すれば思い通りの混色は出来ます。

STEP

絵の具の混色で出したい色を作るには、まず作りたい色をよく見ます

色見本帳だとかアプリでも良いし、何かの資料でも良いので出来るだけ作る色の見本がある方が良いです。

STEP

持っている絵の具の中からその色に一番近い色の絵の具を絵皿に出します

STEP

絵皿に出した色の色相と見本の色の色相を見比べて、もう少し黄色っぽくとか赤っぽくなど他の色相の絵の具を少し混ぜて色相のズレを調節します。

STEP

絵皿に出来た色と見本の色をまた見比べて、もう少し明るくとか暗くというように白や黒を混ぜて明度のズレを調節します。

STEP

絵皿に出来た色と見本をまたよく見て、彩度のズレを調節します。

見本より絵皿の色が鮮やかなら白と黒(グレー)を少しづつ混ぜて彩度をおとします。

見本より絵皿の色がにごっていた場合は白や黒の量が多かったということなので、STEP2~3で出した色みのある絵の具を少し追加して彩度を上げます

STEP

まだ微妙に色がズレていたら、それをおぎなう色の絵の具を様子を見ながら混ぜて完成。

絵の具の混色 実技編

どういうことか解説するために細かく理屈を書いてみたけれど、わたしは実際こんなややこしいことは考えずに混色しています。

とりあえずいつもの調子で混色してみましょう。

STEP

色見本はDICカラーガイド(色見本帳)からオリーブ系の1色を選びました。

これからこの色を混色で作っていきます。

STEP

色見本の色相に注目すると、黄緑のくすんだような色だと感じたのでまずはパーマネントグリーンライトを選びます。

でもこれほどミドリミドリしてないなぁと思うので、パーマネントレモン、ちょっとあたたかみも感じるのでパーマネントイエローオレンジも用意してみます。

基本的にはベースにする色の近似色を合わせて調節していきます。

混ぜてみるとなんとなくそれらしい気配はしてきましたが、見本の色より明るくて鮮やかですね。

STEP

彩度と明度を落とすためにジェットブラックを混ぜます。

ここで画用紙のきれはしに試し塗りをしてみます。

見本の色にけっこう近づいてきましたね。

でもちょっと見本よりグリーンが強い感じなので、はじめにパーマネントグリーンライトを入れる量が多かったようです。

そして画像ではわかりにくいですが、見本よりもわずかに鮮やかで暗くなったように感じます。

STEP

色相・彩度・明度のわずかなズレを調整するため、ここにパーマネントイエローオレンジとごく少量のホワイトを様子を見ながら混ぜていきます。

ほぼ同じ色になりました。

作りたい色にならないとき

作りたい色にならないとき、まずは絵の具の混色の基本を思い出してください。

  • 色みがちがうのか
  • 明るさがちがうのか
  • 鮮やかさがちがうのか

基本チェックするのはこの3つです。

これを調整すればかなりの色は混色で作ることが出来ます。

一部の色をのぞいては。

混色で作れない色

混色ではどうにもならない作れない色というのがあります。

その代表格がピンクです。

赤と白を混ぜたらピンクになると言うけどならへん。

求めてるのはそのピンクとちゃう、と思ったことはありませんか。

このピンク色は絵の具の名前としてはピンクでなくオペラマゼンタと表記されたりもします。(色味もそれぞれ少し異なります)

今回使ったデザインガッシュではローズバイオレットという名前で入っています。

ピンクという色も赤や黄色のような色相の基本的な色みのひとつで、赤と白では作れない色です。

このほかには蛍光色なども普通色からは作れません。

混色して作ることの出来ない色は、絵の具を買う必要があります。

イエローにご用心

混色で作る色が思い通りにならないとき、イエローが犯人である場合がチョコチョコあります。

色には暖かさを感じる暖色冷たさを感じる寒色があります。

オレンジは暖色でブルーは寒色というとわかりやすいのですが、実はブルーひとつとってもどこまでも澄んだ青ッという感じのブルーもあれば、どことなく暖かみのあるブルーもあります。

たとえば混色のときに真っ青などこまでも寒色のブルー系の色みにしたいのに、わずかでもイエローが混入してしまうと青がにごったように感じて思い通りの色になりません。

すっきりとした寒色を作りたい場合はイエローが混ざらないように、イエロー系の色と同じパレットで混ぜないようにしましょう。

パレットでなく絵皿を複数持っておくと、不要な色が混ざる心配がなくて便利です。

絵の具を混色する場所

絵の具はパレット(絵皿)であらかじめ混色しておくことも出来ますし、絵に塗り重ねて混色することも出来ます。

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絵を何度もさわると筆ムラできたなくなりやすいので、私は基本的にはパレットで色を作り、描いたあとから微妙な調整をするときに少し塗り重ねるパターンが多いです

塗り重ねは透明水彩なら問題なく出来ますし、不透明水彩(ガッシュ)やポスターカラーのような不透明色の絵の具も筆につける絵の具の濃度を薄めて軽く塗れば透明水彩のような塗り重ねが出来ます。

また、紙に塗った絵の具がぬれている間に別の色をのせて、にじみによる混色をすることも出来ます。

絵の具を混色するときの注意点

少しずつ混色する

いきなりたくさんの絵の具を混ぜず、はじめに絵皿に出した作りたい色に近い色の絵の具に少しずつ様子を見ながら他の色を加えて混ぜていきましょう。

ミラ

特に黒などの暗く濃い色は少量でも混ぜると色がかなり変化するので、少しずつ

…でももし入れすぎたとしても、ほかの絵の具を足して調節すれば良いので神経質にならなくて大丈夫

水で薄めないで色を作る

透明水彩の場合は薄い色というのは水で薄めて作れる場合もありますが、不透明水彩(ガッシュ)やポスターカラー、アクリルガッシュなどで描く場合は、にじみを活かしたいところ以外は水で薄めるのではなく白をしっかり加えて混色し薄い色を作ります

ミラ

透明水彩に慣れてしまった人はクセで水で薄めてしまいがちですが、これをすると不透明な絵の具の良さを出せなかったり、絵の中で他の部分と絵の具の濃度にバラツキが出て違和感を感じる場合があるので、基本的には水で薄めず色は作りましょう

逆に透明水彩の場合は白を混ぜると絵の具がにごって半透明色になってしまったりするので、もともと薄い色の絵の具を買っておくほうが良い場合もあります。

絵の具の濃度などは人それぞれ作風にもよると思うので、臨機応変にしてください。

グラニュレーションカラーの混色

最近人気のあるグラニュレーションカラー(分離色)ですが、このタイプの絵の具は混色してもやはり分離してしまいます。

作ったそばから絵皿の上で分離してしまったり塗ってから乾くまでに少しムラになってしまったり、混色するときにも注意の必要な色です。

ミラ

実は今回使ったデザインガッシュのジェットブラックも混色するときにやや分離しやすい色でした

ブラックでも数種類の絵の具が出ている場合、混色しやすいほうの色を選ぶと良いと思います。

絵の具の混色 応用編

基本の混色では黒をよく使いますが、やや色味を優しくしたいときや深みを出したいときには黒以外の色を使う方法もあります。

優しい色味にしたいとき

黒の代わりにセピアを使うとほんのりあたたかな色味になります。

厳密に言うと、黒を使っても他の色との混色具合で同じような色は作れるのですが、絵全体を優しい色味に統一して描いていく場合などに便利な方法です。

今回セピアはターナーのポスターカラーを使用しました。

不透明水彩(ガッシュ)とポスターカラーは相性が良いので混色できます。製造メーカーが異なっても大丈夫です。

補色を使う

色相をグラデーション状に並べて円にしたものを色相環と言います。

この色相環で反対側の位置にある色同士、たとえば赤と青緑を補色というのですが、理論上では補色同士を混色すると無彩色になります。

ただしこれは理論上の話で、実際に補色同士の絵の具を混ぜ合わせて見ると無彩色に近い色が出来ます。

無彩色ではないのでほんのり色味があり、黒の代わりに混色に使うとコクというか深みが出ます。

これも作風や好み次第なので、混色でもスッキリした色にしたい場合は他の色相の色はあまり加えない方が良い場合もあります。

まとめ

色相・明度・彩度という色の基本がある程度わかっていた方が、絵の具の混色はしやすいかもしれません。

慣れればかなり多くの色を混色で作れるので、実は絵の具はそんなに色数を持っていなくても大丈夫です。(特に不透明色の場合)

ただ、混色では作れない色があったり、大量に使いたい色があるとき、自分で混色すると色がにごってしまうと感じる場合は、出したい色の絵の具を買ったほうが間違いないです。

長々と説明しましたが、結局ははじめに書いたように自分がいつも使う絵の具を出して混ぜて遊ぶのが一番です。

色見本などを作るのが好きという人は混色表を作って遊ぶのも良いと思うし、私はめんどくさいのではじめから絵を描きます。

絵を描く紙とは別に、紙の端切れなどを用意しておいて混色した色をその紙に試し描きしてから実際に描いていけば、混色で失敗することもありません。

しょっちゅう自分の絵の具をさわって遊んでいると「これとこれを混ぜたらこうなる」というのが感覚で理解できて身につき、混色に必要な色の絵の具がパッと手に取れるようになっていきます。

そうして身につけたセンスはあなたにとって一生ものになります。

今はとても便利な時代になり、なんでもフト気になれば検索したりAIに聞けば何か答えをくれます。

でも絵に関しては結局は自分の手で描かなければいけないので、理屈を追いかけるよりもとりあえず描いてみる方が早かったりします。

混色もどんな色に変わるか、どのくらいでにごってしまうのか、実際に試してみれば一目瞭然です。

むずかしく考えずたくさん絵の具にふれて遊んで、混色を楽しんでくださいね。

ABOUT US
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ミラデザイン画家
似顔絵肖像画を描いたり師匠のアシスタントをしながら制作活動をしています。好きな画材はポスターカラー、不透明水彩、日本画の絵の具。琳派とヨーロッパアンティーク風の絵が好きです。画家活動や画廊で長く働いた経験から得た、絵の描き方やリアルなアートの話のほか、生きづらくて苦しんだ後にたどり着いた、前向きでラクな考え方や肩の力を抜いた楽しい生き方についても書いています。