昨今、自分の絵をECサイトやSNSで売る画家さんが増えた一方、なかなか売れないという悩みもネット上では多く目にします。
私はこれまで他の人の絵も自分の絵も沢山販売してきましたので、今日は絵を売る、絵が売れるというリアルな現場で何が起こっているのか、とりわけお客様が何を考えているのかという絵を買う心理について、詳しくお話ししていこうと思います。
現代では絵を売るという方法はいくつもあり、私の知らない方法も色々あるかと思いますが、絵が売れるときには共通点があると思いますので、あなたがどのような方法でご自分の絵を売りたいと思っていても、参考にしていただけると思います。
絵を買う心理
画家が好きなように描いて好きな値段を付けて発表しても、そう簡単にはお客様に買っていただけないというのが現実です。
絵を買うのには理由があります。
お客様が絵を買う心理について知らないまま絵を売ろうとすると、特に1万円を超える作品については販売に苦戦することが多いと思います。
絵を買う理由
そもそも人はどんな時に絵画を買うのでしょうか。
普段から絵が好きで買い慣れている人の場合は、作品を気に入ったときや画家を気に入っているとき。
多くの人にとっては、人生の節目や門出、お祝い事などの記念やプレゼントとして。
その他に投資目的というのもあります。
これが絵を買う理由、キッカケです。
絵を買うキッカケの他に、実際には様々な心理的要因が積み重なり、お客様の心が動いて初めて絵を購入するという行動に至ります。
絵を買うまでの心理の変化
接客販売の仕事をしている人には広く知られていますが、人が商品を見てから買うまでの心理的プロセスを表したものに「AIDCAの法則」があります。
AIDCAの法則は、絵を買うときの心理にも当てはめて考えることが出来ます。
絵を買う心理① 絵や画家の認知・発見
お客様がお店やSNSなど、様々な媒体から絵または画家を見つけます。
絵を買う心理② 絵や画家に対する興味・関心
「綺麗な絵だな」「お洒落な絵だな」「この絵は一体どうやって描いているんだろう」とか「素敵な人だな」「こんな人がいるんだ」といった興味関心、憧れなどの気持ちを持ちます。
この時に「そういえばリビングの壁に何も飾っていなくて真っ白なのが気になっていたんだよな」とか「○○さんへのプレゼントは絵でも良いかも」といったことが頭をよぎっているかもしれません。
絵を買う心理③ 絵に対する心理的欲求
絵をよく見て「やっぱりこの絵、好きだわ」とか「この絵を飾ったらお洒落な空間になりそう」「これならプレゼントしても喜ばれそう」「この絵を飾っていたら頑張れそう」「この人の手掛けたものを手元に置いておきたい」といった「絵が欲しい」という心理が高まってきます。
その一方で「あの部屋にはちょっと大きいかしら」「一人で決めたら家族に文句を言われるかも」「白い壁に白い額縁ってどうなの」「今月すでに買い物沢山してしまったからどうしよう」「買っている猫が額縁を落とさないかしら」「色褪せするのかな」といった不安な要素もあります。
絵を買う心理④ 絵や画家の価値への確信
「こんな素敵な絵は他では手に入らない」とか「こんな面白い方法で描いているのか」「こんなにも手間をかけて描いているんだ」「こんな思いで描いているのか」「画家さん本人も気に入っている作品らしい」「他の人も良いと言っている人気のある絵柄だ」という絵に対する確信。
「こういう人の絵だったら飾っていても縁起が良いな」「見るたびに自分も頑張ろうという気持ちになれそう」「一生懸命活動しているみたいだから応援したい」「あの有名人もコレクションしている画家なのか」というような画家への確信。
「あの部屋のインテリアともよく合いそう」「額縁も高級感があって良いね」「これならプレゼントにしても恥ずかしくない」「この絵がこの値段で買えるなら高くはない」「包装や配送なども安心して任せられるようだ」「家族も気に入ってくれた」「今キャンペーン中で割引なんだ」というような商品、サービスとしての価値に対する確信。
こういった納得できる要素がいくつもあって初めて、お客様は絵にお金を払うだけの価値があると確信します。
絵を買う心理⑤ 絵を購入する
実際にお金を払って絵を購入するという行動に移します。
お客様が絵を買うまでにはこうした心理的プロセスがあり、ただ「絵が綺麗だから」「絵が上手だから」「有名人の描いた絵だから」というだけで「これいただくわ」とはなかなかなりません。
絵を買う心理からわかること
AIDCAの法則に沿ってみていくと、お客様が絵を見てから買うまでの心理には興味や疑問、不安などがあり、それが解消されることで購入に至っています。
画廊で絵画を販売していたとき、1枚の絵を売るためにはお客様と30分以上お話しするのが普通でした。
長時間接客してもその日は絵を買わず、別の日に改めて家族を連れて見に来て買うというパターンも多かったです。
絵画の販売というのは、食材や日用品のようにお客様自らが手に取ってレジまで並びに来てくれるのではなく、お客様の心理に寄り添い、お客様の興味を深め、疑問に答え、不安を払拭する必要があるカウンセリングセールスと言えます。
あなたの絵を売るために
絵は一度飾ると絵のない生活は味気なく感じたりしますが、絵を飾ったことのない人にとっては生活する上での必需品ではありません。
必需品ではない絵を買う価値のあるものだと確信してもらうためには、絵やあなたという画家自身の価値を伝え、お客様のお困りごとや不安に真摯に対応することが必要です。
これをリアル店舗や画廊では主に接客という形で行います。
昨今増えているECサイトやSNSを介した絵画の販売では、直接お客様に長時間接客するということが出来ない為、お客様の絵を買う心理がどのようなものかふまえた上で、先回りしてしっかり情報を発信していく必要があります。
また、お客様が買いたくなる工夫や客層に合った値段設定なども必要です。
画家活動するにあたってSNSやポートフォリオサイトなどを持っている場合、またはこれから運用していくというときには、お客様が絵を買う心理を意識し、あなたの絵やあなた自身の良さが伝わるよう、丁寧に情報を発信してみてくださいね。