額縁の選び方しだいで絵は抜群に格好良くなる|失敗しない額縁の選び方

額縁の選び方しだいで絵はグンと高級に見えたり、華やかさを増したり、同じ作品とは思えないほど見映えは変わります。

私は長年画廊に勤め、数多くのプロの画家の絵を額装して販売したり、お客様の持ち込まれた絵に合う額縁のオーダーを受けたり、絵だけでなく写真や書、刺繍やスカーフ、パピルスなど、数えきれないほど額装をしてきました。

同じ絵柄の版画でも、額縁の種類を変えるとよく売れたり、逆に売れにくくなったりすることも目の当たりにしてきました。

あなたの大切な絵を額装するときによりよく見える額縁の選び方、絵を飾る部屋に合わせた額縁の選び方、素材や色などのデザインに関することやサイズ、値段など、額装するときにおさえておきたい6つのポイントについてお話します。

額縁の選び方

額縁の選び方には6つのポイントがあります。

  • 規格品とオーダー品
  • サイズ
  • モールディング材の幅
  • 素材
  • 値段

それぞれ詳しく見ていきましょう。

既製品の額縁とオーダー品の額縁

額縁の選び方には、オーダーメイドで作品に合わせて作ってもらう方法と、規格サイズの既製品の額縁を選ぶ方法があります。

既製品の額縁

既製品の額縁とは太子(たいし)サイズや大衣(たいころ)サイズなど、決まったサイズであらかじめ作られている額縁です。

絵のサイズと額縁の形が合わない場合が多いですが、絵の周りに額縁のサイズに合わせたマットをつけることで綺麗に額装することが可能です。

オーダーメイドの額縁と比べるとデザインの数が少ないものの、手ごろな価格で購入できます。

以前は表面にガラスの入ったものが多かったのですが、災害対策などの観点から昨今ではアクリル板に変わってきているほか、ポスター用のパネルには塩化ビニールがよく使われています。

オーダーメイドの額縁

オーダーメイドの場合は絵のサイズに合わせて規格サイズよりも見映えよく額縁を作ることが出来ます。

既製品にはないデザインもあり、沢山のデザインの中から額縁を選ぶことが出来ます。

表面は基本的にアクリル板です。

額縁を扱うショップへ絵などの作品を持ち込んで、店頭に置いてある額縁のコーナーサンプルをあてがいながら気に入ったものを選び、注文取り寄せとなります。

店員さんが一緒に合う額縁を選んでくれますので、実際に入れてみたらイマイチだったという失敗はほとんどありません。

最近ではWEB上で額縁に絵の画像を合わせてシミュレーションできるオンラインストアもあります。

額縁のサイズの選び方

額縁のサイズは基本的にcmでなくmmで表記されています。

よく勘違いされるのですが、額縁のサイズというのは前から見て額縁の端から端までを指すものではなく、額縁の中に納まるもののサイズ、額縁を裏返したときの裏板のサイズです。

油絵額ならF〇号のようにキャンバスのサイズに合うものを選べば良いのですが、紙の作品を額装するときには2通りのサイズの選び方があります。

絵とピッタリサイズの額縁を選ぶ

絵をそのまま額縁に入れるという方法です。

絵のサイズに合わせてオーダーメイドであつらえることも出来ますし、少し小さめの規格サイズの額縁に合わせて紙を少し切る、という方法もあります。

絵を切りたくない場合、絵より大きめの額縁に入れることが出来ますが、絵の周りにスキマがあるとあまりカッコ良くはないので、その場合は(特に展示や販売をする場合には)マットをつけた方が良いです。

マットをつけて一回り大きな額縁を選ぶ

絵の周りにマットをつけて額縁に入れるという方法です。

この場合、こうでなくてはいけないという基準はありませんが、大衣サイズ程度までの額縁で私がよく選んだマット幅は50mm。

上下左右にぐるりと50mm幅のマットにすると程よいバランスになることが多いです。

この場合の額縁のサイズの計算方法は

絵の見えている部分の長さ+100mm(マットは絵の両側にあるので50mm×2)

これでオーダーするか、これに近い規格サイズの額縁を選び、マット幅を変えて調節します。

小さな絵の場合はマット幅をやや狭め、大衣サイズより大きなサイズの場合はマット幅をやや広めにすると見映えが良くなります。

マットについてはこちらの記事に詳しくまとめました。

額縁の色の選び方

額縁の色には4つの選び方があるほか、額縁にはさけた方が無難な色もあります。

絵の色に合わせた額縁

絵の中の色と似た色の額縁を選ぶ選び方です。

額縁の色と似た色が強調されて見えます。

選ぶ色によってパッと見の絵の色のバランスが変化してしまわないように、出来るだけ広範囲に使われている色を選ぶと、絵そのものの色のバランス感覚を保てます。

インテリアに合わせた額縁

飾る場所が決まっている場合は、その部屋のインテリアに合う額縁の色を選ぶという選び方もあります。

額縁は家具と考えることも出来ます。

部屋の家具の色と合わせると、違和感なく飾ることが出来ます。

壁にとけこむ白い額縁

白い壁に白い額縁がNGと思っている方が時々いらっしゃいますが、そんなことはありません。

白い壁に白い額縁を飾った場合、額縁が主張されすぎず、自然な感じで絵のみが浮き出てくるイメージになります。

他の色(壁の色と違う色)の場合は額縁の外側までの大きさをひとつの形として感じやすいですが、ホワイト(壁と同系色)の場合は絵の部分が形として感じやすいです。

この感じ方の違いを利用した額縁の選び方の例として、部屋や壁の面積がさほど広くないのに大きめの絵を飾りたい場合、ホワイト(壁と同系色)の額縁を選ぶことで圧迫感を減らすことが出来ます。

逆に広いスペースが開いている場合は、額縁の色までくっきり見えるものを選ぶとボリューム感が出ます。

何にでも合う額縁

どんな絵にもインテリアにも合わせやすい額縁の色はゴールド系、温かみのあるシルバー系です。

高級感もあり、展示にもプレゼントにもオススメです。

中の絵を時々入れ替えて繰り返し使いたいという方にもおススメします。

ゴールドやシルバーは基本的にどんな色とも合わせることが出来るので、額縁の選び方がよくわからない方は難しく考えず、この色を選んでおいて大丈夫です。

シルバーよりゴールドの額縁の方が明るく華やかに見えますが、ブルー系の色の絵を綺麗に見せてくれるのはシルバーの額縁です。

同じゴールドやシルバーでもキンキラキンなタイプとヘアライン仕上げといわれるマットなタイプ、アンティーク加工タイプなど色々ありますが、程よく華やかで何にでも合うのはヘアライン仕上げで上品な額装が出来ます。

もう一色、わりと何にでも合わせやすくお洒落に飾ることの出来る額縁の色があります。

それはグリーン

風景画にも花の絵にも合わせやすく、インテリアにも合わせやすい観葉植物のような自然なグリーンはオススメ。

意外に思われるかもしれませんが、機会があれば一度トライしてほしい色です。

オススメしない額縁の色

長年様々な額装をしましたが、ブルーの額縁だけは本当に合わせるのが難しいです。

他の色に比べて合うインテリアが限られる傾向にあるうえ、寒色ゆえに寂しい雰囲気になる傾向があります。

ブルー系の絵を飾る場合でも、額縁はシルバー系やホワイトなどにしておく方がお部屋には飾りやすいと思います。

絶妙なバランスでお洒落に見せられる場合もありますがレアなケースなので、他のデザインと迷ったときはブルーの額縁を選ぶのはあまりオススメしません。

額縁(モールディング材)の幅の選び方

額縁を組むときの主要な材料、竿のことをモールディング材とよびます。

額縁のモールディング材の幅の選び方で、絵の見映えはかなり変わります。

幅が10~20mmほどの細いモールディング材は値段も手ごろで、イラストにもよく合いますし人気もありますが、実は少し損なデザインでもあります。

細くて繊細で特にデコラティブな彫刻のあるデザインは可愛らしく、女性がよく選ぶ傾向がありますが、細くて繊細ゆえにが貧弱に見えてしまう場合が多々あります。

これは絵を細い額にだけ入れたときには気が付きにくいのですが、同じ絵をもう少し太めの額縁に入れて見比べてみるとよくわかります。

華奢に見える方がお好みの場合はそれ以上無理に押し付ける気はありませんが、例えば展覧会で展示するときなどは、あまり細すぎない額縁の方が作品にもボリューム感が出ますので、幅が3cm以上あるものの方がオススメです。

公募展など他の作家さんの絵と隣同士で並んだときに、額縁が細いと貧弱で見劣りしてしまう場合もありますので、受賞を目指す場合などはそういったことも想像しながら額縁は選んだ方が良いと思います。

色々見比べると、モールディング材の幅は5cmくらいあったほうが絵はカッコ良く見えます

特に絵画を販売したいと考えている方は、額縁が細いときより太めの方が見映えがして価値も高そうな雰囲気が出ますので、額縁代が若干高くなっても太めの方がオススメです。

細い額縁はミニマムで都会的な雰囲気を演出できますので、絵画よりも写真、絵画でもあっさりとしたお洒落な印象に見せたい場合に向いていると思います。

額縁の素材の選び方

額縁を選ぶときは基本的にデザインで選ぶものかと思いますが、材質についても少しふれておきます。

額縁は主に縁部分のモールディング材、表面の透明なカバー、裏板、厚みを調節するボール紙で構成されます。

額縁の素材

モールディング材には木製、樹脂製がある他、アルミ製やアクリル製の額縁もあります。

  • 木製

やはり質感や彫刻が細かく美しいのは木製の額縁です。

昔の額縁は重たかったという印象がありますが、昨今の額縁は木製でも気にするほどの重さではありませんので、よほど大きな立体額装でもなければ石膏ボードの壁にも飾ることが出来ます。

額縁は家具の一部でもありますので、木製にすると高級感が出ます。

  • 樹脂製

樹脂製は木製額に比べると軽いです。

樹脂の上から木目調のプリントを施したものや彫刻のあるものもあります。

ヘアライン塗装を施したものはちょっと見ただけでは樹脂製か木製かわからないほど綺麗に出来ているものもあります。

  • アルミ製

主にジグソーパズルやポスター向けです。

  • アクリル製

2枚のアクリルで作品を挟み込むタイプのフレームです。

モダンなイメージになります。

透明なカバーの種類

額縁表面を覆うカバーには、ガラス、アクリル、塩化ビニールなどがあります。

  • ガラス

既製品の額縁に使われていることが多いです。

ガラスは災害時に割れてあぶないことから昨今敬遠される傾向が強く、額縁メーカーさんでも新しいモデルはガラスからアクリル板にリニューアルされるところが増えてきています。

既製品の額縁がいいけどガラスは嫌だという場合、アクリル板だけ別途購入して入れ替えるという方法もあります。

  • アクリル板

ガラスより軽く、万が一割れた場合にもガラスのように粉々に砕けにくく安心です。

一見同じに見えるアクリルにも品質の違いがあり、安価な雑貨に使われるようなアクリルは透明度が低く経年による黄変が起こる場合があります。

額縁メーカーさんでは大抵、透明度が高く変色しにくい品質の良いアクリルが使われています。

  • UVカットアクリル

アクリル板に作品の劣化の原因となる紫外線を防ぐためのUVカット加工を施したもの。

作品を長く大切にしたいときは飛びつきたくなりますが、アクリルにごくわずかな黄色っぽい色が付いています。

  • 塩化ビニール

アルミフレームやポスターパネルの表面カバーに使われることの多い素材。

やわらかくしなり、軽いです。

アクリルやガラスと比べると透明度はやや低く、こすれるとすぐにキズが付きます。

額縁を値段で選ぶ

額縁は規格サイズの既製品とオーダー品とで値段がかなり違います。

それは商品の質によるものというより、大量生産か一点物かという違いによるものと思われます。

額縁の材質によって変わりますが、例えば木製の額縁の場合、既製品はA4サイズの絵にマットをつけて太子サイズの額縁に入れた場合で5千円ほどから。

A3サイズの絵を同様にマットをつけて大衣サイズの額縁に入れて1万円ほど。

オーダー品の場合は、大衣サイズに近いサイズでマットをつけて2・3万円程度だったかと思います。

アルミ製のフレームは木製の既製品より安いです。

アクリル製のフレームは品質によって値段が異なります。

品質の良いアクリルの場合は既製品の木製フレームと同程度です。

  • 予算に余裕のある方は沢山のデザインから自由なサイズであつらえることの出来るオーダー品がオススメです。
  • 費用をもう少し抑えて見映えを良くしたい場合は既製品にマットで合わせる額装がオススメ。

額縁のオーダーについてはこちらでより詳しく説明しています。

額縁の選び方 番外編

これまでお伝えした額縁の選び方は一般的な額縁メーカーから購入するときの目安です。

それとは別に個人で他にないような面白いデザインの額縁を作っている方がいらっしゃいます。

一般的な額縁より値段が高く小品であることが多い印象ですが、装飾性やオリジナリティの高い素敵な額縁が見つかるので、そういった額縁作家(?)さんから手に入れるという方法も特別感があって良いものだと思います。

額縁の選び方 まとめ

実は地域によって人気のある額縁のデザインの傾向は異なります。

店頭で絵や額縁を販売していた頃、他店舗にも応援であちこちに行きましたが、店によってよく売れるタイプの額縁に違いがありました。

私の似顔絵を販売してくださっているECサイトでは、額縁の色をいくつか選べるようになっていますが、私の絵の場合はゴールドがダントツ人気です。

贈り物などにはやはり華やかさのあるゴールド系は全国的に根強い人気があるようです。

ひとそれぞれ好みが異なるので、これが正解という額縁の選び方はないのかもしれませんが、目的に合わせて額縁を選ぶことで、作品の見映えはグンと良くなります。

あなたが額縁を選ぶときにはぜひ参考にされて、素敵な額装を楽しんでくださいね。

ABOUT US
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ミラデザイン画家
似顔絵肖像画を描いたり師匠のアシスタントをしながら制作活動をしています。好きな画材はポスターカラー、不透明水彩、日本画の絵の具。琳派とヨーロッパアンティーク風の絵が好きです。画家活動や画廊で長く働いた経験から得た、絵の描き方やリアルなアートの話のほか、生きづらくて苦しんだ後にたどり着いた、前向きでラクな考え方や肩の力を抜いた楽しい生き方についても書いています。