額縁のオーダーには興味はあるけど、いつも既製品を購入しているという方へ。
画材店やギャラリーの一角に設けられた額縁のコーナーサンプルを見て、額縁のオーダー用かな?と気が付いていても、値段がどのくらいするかわからなくて躊躇している(でも実は気になってはいる)という方へ。
私は長年画廊に勤め、そこで額縁の販売にも携わっていました。
沢山のお客様から額縁のオーダーのご相談を受け、持ち込まれた作品が輝くような額縁選びのお手伝いを毎日のようにしていました。
額縁はオーダーするとどんなメリットがあるのか、既製品とはどう違うのか、実際のオーダーの流れはどんな感じなのか。
安心してお店に行っていただけるように、オーダーするときの手順やコツ、注意点などについて詳しくお話ししようと思います。
額縁をオーダーするメリット
オーダー品の額縁と既製品の額縁はどう違うの?と思っている方へ。
オーダーの額縁はデザインの選択肢が多い
オーダー品の方が選べるデザインの種類が多く、既製品には使われていないデザインの額縁を作ることが出来ます。
非常に高級感のあるものやお洒落なデザインもあります。
オーダーの額縁は自由なサイズ
既製品の額縁はそれぞれ規格のサイズで作られていますが、実際に額装する中身(絵)はしばしば規格サイズではなく、縦横の比率も規格サイズとは異なります。
そのような場合はマットで調節して額装出来ますが、額縁をオーダーするとマットなしで中の絵にピッタリのサイズで作ったり、マットをつける場合も縦横の比率をそろえるなど、より見映えの良い額装が可能になります。
既製品で使われているのと同じデザインの額縁をサイズ違いで作ることも可能なので、個展などで額縁のデザインをそろえたい場合にも重宝します。
額縁のオーダーで額装できるもの
額縁のオーダーの場合、サイズがかなり自由なことに加え、立体額装にすることで中に分厚いものを入れることも可能です。
中に入れるものに対してモールディング材に厚みが足りない場合は、モールディング材の裏側にドロ足という下駄のようなものを付け、額縁に厚みを足して額装します。
絵画・写真・賞状・手ぬぐい・スカーフ・帯・刺繍・陶板・ステンドグラス・パピルス・ユニフォーム・お皿等。
額装の時に注意の必要なものもありますが、様々なものを額装することが出来ます。
額縁のオーダーの手順
額縁のオーダーは一部のECサイトでは画像のはめ込みなどで完成形がイメージしやすくされているところもあります。
完成形がイメージしにくい場合、厚みのあるものなど、特殊なものなどは基本的に店頭で相談されることをオススメします。
イメージ画像はとても便利でありがたいものだと思いますが、あくまでもイメージ画像で実物とは大きさが異なり額縁の質感などは実感しにくいので、ECサイトを利用する場合でも出来ればお店には見に行って、実物のコーナーサンプルを色々見ておいてからデザインを選ぶことをオススメします。
店頭での注文の場合の一連の流れを説明します。
額縁のオーダーをしたいと店員に伝え、作品を出す
好みの店頭サンプルをいくつか選び、作品に合わせてみる
気に入ったら見積り
申込書に記入する
入金
入荷の連絡が来たら受け取りに行く(または配送)
詳しく説明します。
額縁のオーダーと伝える
まずはお店に行き、お店の方に額縁をオーダーしたい旨を伝えましょう。
持参した作品を店員さんに渡すと、カウンターにひろげてくれます。
親切な店員さんだとオーダーだけでなく既製品もあること、お値段の違いなどを簡単にサクッと説明してくれる場合もあります。
オーダーしたい額縁のサンプルを選ぶ
店頭の壁面やカウンターにズラッと並んでいる額縁のコーナーサンプルですが、あれは自由に取り外せるようになっています。
好みのサンプルを選んで壁からはずし、作品に実際にあてがってみて合うかどうか確認します。
どれが合うか全然わからないという場合も心配ありません。
わからないと言えば、経験豊富な店員さんがその作品に合いそうなデザインのサンプルをいくつか提示してくれます。
お客様が迷っている間に店員さんは素早く作品のサイズを測ってくれています。
この時に気になるコーナーサンプルを出来れば2・3点程度にしぼっておきます。
マットが必要な場合はマットのサンプルも一緒に合わせて選んでください。
特別な色にしない場合はマットは真っ白よりアイボリー系がオススメです。
マットの詳しい選び方は別の記事で詳しく説明しています。
額縁のオーダーの見積り
「このフレームでおいくらですか?」という感じでとりあえず選んだ額縁の見積りを出してもらいます。
この時に納期の確認もしておきましょう。
納得出来ればそのまま注文へ。
予算より高い場合は既製品の検討を。
額縁のオーダー申込書に記入する
申込用紙に必要事項を記入します。
額縁の寸法などは店員さんがきちんと書いてくれています。
入金する
後払いの出来るところもあるかもしれませんが、オーダー品につき、基本的に前払いか一部入金になります。
そしてオーダー品である以上、お客様都合のキャンセルは出来ないと考えてください。(工場で額縁を作る前に間に合えばキャンセル出来る場合もありますが、あまり感じの良いものではありません。)
配送を希望するときは伝票に記入します。
オーダーした額縁の受け取り
入荷の連絡が来たら、近日中に受け取りに行きます。
作品を持参すれば、店頭で綺麗にセットしてもらえます。
配送の場合は発送の連絡が来ます。
店頭での流れはざっとこんな感じです。
額縁のオーダーにかかる費用
額縁はオーダーすると既製品より費用がかかります。
材料となるモールディング材の材質によっても違いますし、幅広のデザインになるほど値段も高い傾向があります。
材質では樹脂製は比較的手頃で木製の方が高くなります。
木製の中でもチーク材やマホガニー材は特に高いです。
ざっくりとしたお値段の目安ですが、店頭価格で
- 太子サイズ(A4の絵にマットを付けた程度の大きさ)で1万5千円前後
- 大衣サイズ(A3の絵にマットを付けた程度の大きさ)で2万円~3万円台
このくらいだった記憶があります。
これは私が画廊で働いていた頃の店頭価格を参考にしていますが、モールディング材の多くは輸入品なので円安や木材価格の高騰でもう少し値上がりしているかもしれません。
出来るだけ費用を抑えたい場合は、店頭での購入よりオンラインショップに軍配が上がります。
額縁をオーダーするときのコツ
額縁をオーダーする時のコツ、といいますか知っていた方が得なこともあります。
オーダーでは幅が太めの額縁を選ぶ
これ、以前の記事にも書いたのですが、額縁って細いとどうしても貧弱な印象になりやすいです。
額縁をわざわざオーダーにするというのは既製品より見映えが良くなるからこそするという面があると思うので、そういう意味では太め(幅4~5cm以上)の額縁の方がオススメです。
細めと太めのコーナーサンプルを作品に合わせてみて実際に目で見て比較されると、意味が分かると思います。
もちろん作品の雰囲気やお好みもあるので、細いデザインが良くないということではありません。
日にちに余裕をもってオーダーしに行く
オーダーの場合は2週間ほど納期がかかります。
急ぎの場合は相談すれば多少早くしてもらえる場合もありますが、額縁の工場の注文の混み具合などで難しいこともあります。
展覧会用などで一度に大量の注文が先に入っている場合、通常より納期が遅れてしまうこともあります。
また、GWや盆正月をまたぐと通常以上に日数がかかるので、展覧会用など期日があるものに使う場合は早めにオーダーされることをオススメします。
額縁の受け取りには時間に余裕をもつ
オーダーした額縁を受け取る際、作品のセットをお店でしてもらう場合は簡単なもので10分程度、スカーフやパピルスなど特殊なものだと20~30分必要な場合があります。
時間には余裕をもって受け取りに行ってください。
額縁の用途を伝える
サンプル選びに迷ったときなど、店員さんが選ぶのを手伝ってくれるときに用途がわかっているとスムーズに選んでもらえます。
自宅用かプレゼントか、展覧会用か。
飾る場所は和室か洋室か。
飾る部屋のインテリアはどんな感じか家具の色はどんな色か。
飾る場所が決まっている場合はその部屋の写真を撮っておくと、店頭でもイメージしやすいですよ。
額縁をオーダーする時の注意点
額縁のオーダーでは知らないままお店に行くと「エッ…そんな…」という思いをする場合があります。
ぜひ知っておいてほしいことについてお話しします。
額縁のオーダーの際、作品は預かってもらえない
これはお店によるかもしれませんが、オーダーして作品を預けておけばセットしてくれて受け取りもすぐ出来ると考えがちですが、お店としては万が一の事故が無いよう、出来る限りお客様の持ち込まれた作品などは預かりたくないと考えていますし、会社の規定で預かってはいけないことになっている場合もあります。
持って帰ってまた次回持ってくるなんて…とめんどくさく感じるかもしれませんが、基本的に預かってもらえないという心づもりをしておくか、預かってもらいたい場合は事前に確認しておくと良いと思います。
預かってもらえる場合でも、運送中や額装する際に作品に瑕疵が生じても額縁代以外の補償は受けられないという前提で預かってもらいましょう。
額縁は欠品が多い
オーダーか既製品かに関わらず、どこの額縁屋さんでも額縁という商品はわりと頻繁に欠品します。
なぜかというと額縁の材料となるモールディング材の多くが海外からの輸入品だからです。
輸入となると額縁を作るメーカーもまとめて一気に発注しますので、欠品したからといってすぐに発注されるとは限りません。
その上重たいモールディング材は船便で日本に輸入されます。
日本へ到着するまで1・2か月かかることは普通です。
既製品に使われているモールディング材はわりと頻繁に発注されていますが、オーダー品でしか取り扱いのないデザインは一度欠品すると2・3か月入ってこないのも日常茶飯事です。
店頭にサンプルが出ていても、タイミングによって欠品になってしまう場合もあるので、「あの額縁が良いな」と狙いを定めたものがある場合、のんびりしていないでモールディング材の在庫のあるうちにオーダーしておいた方が良いです。
欠品でなく廃番というのもわりとよく起こります。
素敵なデザインで輸入元の会社では作り続けているモールディング材でも、店頭でのオーダーが少ないものは在庫限りでその後発注されないものもあるので、やはりほしいならその時にオーダーしておくのが確実に手に入れられる方法です。
欠品中は入荷時期が気になるものですが、船便というのは確実な到着日がわからないものですので、店員さんに詰め寄ってもわからないものはわかりません。
額縁は思い立ったらぜひ早めにオーダーしてくださいね。
額縁のサイズや重さで選べるデザインが限られる
額縁には材料となるモールディング材ごとに作ることの出来る限界サイズというものが設定されています。
例えば大きくて長細い額縁の場合、モールディング材が反ってしまうことがあります。
額縁のサイズがとても大きい場合や、中に入れるものが重たい場合(ステンドグラスや石など)は、その重みに額縁が耐えられず、最悪の場合壊れてしまうこともあります。
細い額縁ほど限界サイズは小さめとなります。
額装出来ないものがある
お店によってはお客様のご要望でも額装することの出来ないものがあります。
- お皿や石など特殊なもの
お皿の額装には専用のパーツが必要になりますが額縁屋さんによっては取り扱いのないところもあり、石など特殊なものもそうですが、必ずしもその店で額装セットしてもらえるとは限らない為、事前に確認されることをオススメします。
- スカーフ
これは高価なものにわずかでも糸のツレなどを作ってしまったらという心配から店頭での額装をお断りするケース(額縁のオーダーそのものは可能ですが、ご自身でセットしてください)というものもあれば、スカーフのブランドから禁止されているものもあります。
スカーフを額装してお店などに飾ることを禁じている有名ブランドがあり、知らずに額装展示した場合、お店にブランド側からクレームが入ることもあるようで、自宅以外の場所に飾る目的でスカーフの額装を希望される場合、丁重に断られる可能性があります。
一部のオンラインショップではスカーフの額装を得意とされているお店もあります。
私もよく額縁を購入している額縁のタカハシさんはスカーフの額装にも力を入れておられるようです。
スカーフについては私も何度も額装したことがありますが、慣れていないと綺麗にセットするのはかなり難しい為、ご自身でセットするより得意にしておられるお店にお願いすることをオススメします。
特殊な額装については対応してくれるお店と出来ないお店があるようなので、事前に問い合わせてみてください。
まとめ
額縁のオーダーについては、とりあえずお店に作品などを持ち込んで相談すれば、どんなデザインが良いかわからなくても、お店の方が合うものを一緒に考えてくれますので、特に難しいことはありません。
欠品の問題や納期が多少かかることがネックなので、展覧会で使う額縁などで作品がまだ出来上がっていないという場合でも、絵のサイズを決めておいて先に額縁はオーダーしておくなど、日にちに余裕をもってオーダーすることが大切です。
その場合はわりとどんな絵にも合うタイプのデザインを選んでおくと、後で絵と合わなかったということを防げます。
先に額縁が手元にあると、絵を描いている途中で額縁に実際に合わせてみることで、もう少しコントラストを上げて描いた方が良いとか、実際に額装した時の見映えがわかるので便利なこともあります。
マットの選び方についてはぜひこちらの記事も併せてお読みください。
既製品にも素敵なデザインの額縁は沢山ありますが、実際に見比べてみると、やはりオーダーの額縁で額装すると見映えがしてより良いものが出来上がります。
お値段は既製品より少しかかりますが、あなたの大切な作品をより輝かせてくれるはずですよ。