絵画にはお客様に売れやすいサイズがあります。
あなたは絵を描くとき、絵画のサイズをどのように決めていますか?
自分の描きやすいサイズ、机の上で描けるサイズ、小さい方が描きやすい、大きい方が描きやすいなど、人それぞれだと思いますが、私が画廊で実際に販売していて人気のあった絵画のサイズとその理由について解説します。
描いた絵を売りたいという画家さんのお役に立てれば幸いです。
どんな絵柄でも人気のあるサイズ
人気がありよく売れる絵画のサイズには、サイズ単体の理由もあれば、絵柄と密接に関係した理由がある場合もあります。
まずはどんなジャンルの絵柄でも人気のある絵画(額装されたもの)のサイズをご紹介します。
一番人気のあるサイズ
画廊で一番よく販売した記憶がある絵画のサイズは太子サイズと大衣サイズ、30~35cm角サイズ、油絵の場合は6号や8号の額装品です。
マット付きの額装では、実際に絵画の(見えている部分の)サイズはそれぞれA4サイズ(太子サイズの額縁)、A3サイズ(大衣サイズの額縁)、20~25cm(30~35cm角の額縁)くらいの大きさです。
これは日本の住宅の部屋に合わせやすいサイズで、贈り物にするときにもそれなりにきちんとした雰囲気や見映えがする為、人気がありオススメです。
私が今運営している吉祥画のショップでは、一番よく売れているのは大衣サイズです。
小さいサイズ
小さいインチサイズ、油絵ならSMサイズの絵画もよく売れオススメです。
SMサイズとはハガキ2枚分の大きさのことです。
インチサイズで額装された絵画のサイズも、SMサイズと同じくらいの大きさです。
20~30代くらいの比較的若い層に人気が高く、自分用に購入されたりプレゼントするときも仰々しくならないサイズなのが良いようです。
ただ注意が必要なのは、形が小さいから売れるというよりも、小さいから値段が手ごろで買いやすいという理由の方が多かったことです。
経営者の方が仕事関係の人へ開業祝いなどとして絵を購入される場合には、ある程度の大きさがあるものの方が贈り物として見映えがする為、大衣や8号ほどの絵画を選ばれることが多かったです。
このような用途で絵画を購入される方たちは、小さなサイズの原画と大きなサイズの版画が同じような価格なら、絵が原画かどうかよりも大抵大きい方を選ばれました。
細長いサイズ
規格サイズにないような、ちょっと細長い形の絵画は見た目にも新鮮でお洒落な印象があり、お客様にも人気がありオススメです。
縦長よりも横長の方が需要は高かったです。
絵柄によっては人気のあるサイズ
日本の家屋は欧米に比べて狭く、大きなサイズの絵画が売れないというイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
たしかに1メートルを超えるようなサイズの絵は飾ることの出来る場所が限られる為、簡単には売れにくいですが、手ぬぐいくらいの細長いサイズ、三々サイズ、B2くらいの大きさであれば、絵柄によってはわりとよく売れます。
絵柄は風景画の場合が多く、メルヘンな絵柄でも風景の描かれたものが人気です。
大きな絵画を買う方の特徴としては、贈り物ではなく自分用。
マイホームを建てたときや経営している病院などの待合室に、本当に気に入った絵柄を購入されるというケースが多かったです。
大きなサイズの絵画というのは購入されるまでは価格も含めてどうしようか迷う方も多いのですが、購入された後の満足感は高い傾向があります。
実際に飾ってみると大きな絵というのは空間の雰囲気を変える力が強く、お部屋などがグンと素敵に見えるようになり「やっぱりあの絵、買って良かったわ。」「すごく良かった。」という風に後日報告してくださるお客様も何人もいらっしゃいました。
私も自宅の玄関には比較的大きいサイズの絵を飾っていますが、一度大きなものを飾るともう小さいものには変えたくない、という気持ちになります。
ECサイトで大きなサイズの価格の高い絵画を販売するのは、特にはじめのうちは難しいと感じますが、販売実績を重ねて高評価のレビューが増え、信用が出来ると大きな絵も売れるようになります。
小さなサイズの絵画のデメリット
小さいサイズの絵画は価格も手ごろで確かに売れやすいです。
画廊などで実物を見比べると、その存在感には圧倒的な違いがありますが、ECサイトでの販売となると、大きな絵画も小さな絵画もモニターで見えるサイズは同じ。
売れやすいとなると、つい小さなものばかり描きたくなるかもしれません。
けれども小さな絵ばかり描くことにはデメリットもあります。
カフェやお店の一部に飾らせてもらう場合はスペースの都合上小さい方が良い場合もあるかと思いますが、絵画の為だけの展示空間で小さな絵ばかりだと、展示したときこじんまりとまとまってインパクトの弱い展示になってしまいます。
これは沢山の作家さんのサイン会会場の設営をして実際に見てきた実感です。
小さなサイズの絵画は価格が安くなりがちですが、全体の作品の量に対して小さいサイズがむやみに多くなると、作家さんの作品価格のイメージも安く感じられ、それより大きなサイズの絵を高く感じてしまうリスクがあります。
絵画の値段や小さい作品を沢山並べなくても数を売ることの出来る方法については、別の記事で詳しく解説します。
画家さんにとって小さなサイズの絵画ばかり描くことの一番のデメリットは、描く絵が小さすぎると技術的な向上がしにくいという点です。
これは絵の上達を望む人にとっては無視できない問題です。
どうして技術が向上しにくいかと言うと、小さなサイズであればチョコチョコ描けばなんとなくそれなりに画面が持ちこたえてくれるからです。
それと同じ描き方で、もう少し大きなサイズの絵を描こうとすると、もう持ちこたえることが出来ません。
構図の工夫が必要になったり、色のバランスが気になったり、筆ムラが気になったり…。
大きな画面を持たせるためにはどうしても技術が必要になるので、絵を完成させることが上達にもつながっていきます。
私は絵が上手になりたいので、普段は小さくてもA4サイズ以上のものを描くようにしています。
まとめ
絵画を買う人にはそれぞれの目的や理由があります。
その理由に寄り添うことで絵画は売れやすくなります。
絵画を販売したい場合は、あなたの絵を買ってくれそうな人の年齢層や生活スタイルを想像し、それに合うサイズを意識されると良いと思います。
展覧会の場合は絵画を売るかどうかとは別に、会場の規模や雰囲気に合うサイズや量を考えて作品を準備することをオススメします。
絵が上手になりたい方には、小さな絵を毎日1枚描き続けるのも良いとは思いますが、もう少し大きな絵を描く方が技術は向上しやすいと思います。
あまり大きな絵は、描きなれていないと途中で上手くいかなくて嫌になってしまうこともあるので、練習もかねてという方にはA4~A3くらい、6号~8号くらいのサイズ感が描きやすいのではないかなと思います。