絵のテーマが決まらない、画家としてのテーマが決まらない、公募展などの決められたテーマで絵を描くのが難しい。
画家活動や美術の授業で必ず課題になる絵のテーマ。
絵のテーマについて難しく考えすぎてしまう人へ、テーマにまつわるリアルな話と絵のテーマの決め方や与えられたテーマで絵を描く方法についてお話しします。
絵のテーマとは
絵の「テーマ」とは、描く対象そのものを指す「モチーフ」とは少し異なり、その絵を描いた動機やその絵から伝えたいこと、という意味です。
作品のテーマや、画家としてのテーマがあります。
絵のテーマや画家としてのテーマがあることで、「この画家さんは、こういう絵を描くこんな人」というキャラクターがわかりやすくなります。
私の通っていた美大ではテーマについては授業であまり深くは触れられませんでしたが、チェコに留学した友人から聞いた話では、あちらではテーマが非常に重要視されるそうで「どうしてその絵を描いたのか」「どうしてそのような表現でなければならなかったのか」といったことを、しっかり説明できないといけないようでした。
日本と海外とではアートに対する興味関心の意味合いが違うのかもしれません。
日本でもやはり、何かの媒体に掲載されるときなどにはテーマは自然と必須になりますし、肌で感じた感覚としては画廊のオーナーさんや公募展の関係者の方達はそういったテーマにまつわる話が好きな人が多いようでした。
絵のテーマは必要か
画家として必須のような「絵のテーマ」ですが、その必要性をあまり感じなかった場面があります。
それは画廊で絵画を販売していたときです。
絵画の販売の接客には基本的に時間がかかりますので、お客様と沢山のお話しをします。
その中で画家さんの絵に対する思いとかテーマのようなことも(資料などがあれば)お伝えするようにしていましたが、正直、絵を買いに来られる日本のお客様にはさほど興味のないことのようでした。
「命のはかなさや強さを~」とか「人の心のうつろいを~」みたいなことを話しても「へ~」で終わることがとても多いです。
お客様が気になっているのはその絵がキレイで良いなとか、西側に黄色い花の絵がほしいとか、絵に描かれた猫が飼っている猫に似ているから気になるとか、絵に描かれた風景は旅行に行った場所だから買おうかなとか、あの部屋の壁にこの大きさの絵はかけられるかなとか、なんかそういうことでした。
ただ、画廊にもそれぞれ特徴や客層の違いがあるかと思います。
私の働いていた画廊では、インテリアとしての絵画を広く多くのお客様に向けて販売していたところで、コレクターさんが通う画廊と少し方向性が異なるため、画廊によっては国内であってもテーマを重要視されるところもあるかもしれません。
絵のテーマの決め方
絵のテーマ、画家としてのテーマというのは、画家活動を続けているうちに自然とわいてきたり大切に思うことが出てきたりして、頭をひねらなくてもなんとなく決まってしまったりするのですが、今すぐ決めないといけないという人は、出来るだけ簡単に考えることをおすすめします。
「可愛さを表現したかった」「花のキレイさを伝えたかった」「夕日の色に感動した」そうした絵を描いた動機を素直に出してしまうのが感じが良いと思います。
無理やりひねり出して理屈っぽくしても、絵から感じられなかったらちょっとせつない。
人間国宝で歌舞伎役者の坂東玉三郎さんが「舞台で舞っているとき、どんなことを考えていますか」と質問されたとき「数をカウントしています」という意味合いの返答をされていたことがあります。
舞う姿がどのように見えているか計算し、数を数えながら体の動きをコントロールされているのは私には衝撃でしたが、どんな思いを込めたかではなく表現者として見る人に表現したいことをわかるように伝える、ということについて考えさせられました。
絵のテーマを無理やり理屈っぽく複雑にしてしまうと、絵から自然な感じでそのメッセージを感受け取りにくく、かえって軽薄な印象になってしまう気がします。
はじめに自分が感じた「この花が好き、お花ってきれいだな」というシンプルな気持ちから入るのがラクだし、見る人にも好印象ではないかと思います。
絵のテーマに合わせる方法
公募展などで絵のテーマが先に決められていて、それに合わせて絵を描くのが難しいという方へ。
テーマに合わせてイチから考えては大変です。
私の美大受験の話をしましょう。
美大の実技試験にはデッサンの他に絵の具を使った実技があり、描く絵のテーマは試験にならないとわかりません。
試験対策としては予め描く絵を決めて練習しておきます。
そして当日出されたどんなテーマにもその絵をこじつけて描きます。
出されたテーマの内容によって少し変えましたが、ベースの絵はすでに決めていたので慌てることなく時間内に描いて合格できました。
先ほどの「無理やり理屈っぽくしない方が良い」という話と逆行するようですが、試験や公募展の場合など、出されたテーマにそってイチから考えるのが難しいときは、自分の描きたい絵をテーマに寄せていく方がラクで自分らしい絵が描けます。
まとめ
日本のお客様は気にされない方も多いですが、チェコ以外でも海外を視野に入れた活動をする場合、何を伝えようとしているかという絵のテーマはアーティストにとって非常に大事な部分とされています。
ただ、画家としてのテーマは画風とも通じますが、まだ決まっていないという人も慌てなくていいように思います。
生きているうちに自分にとって大切なことは出てくるものだから、あまり心配しなくても絵を描き続けている間に画家としてのテーマは向こうからやってくるのではないかな、と思います。