額装マットのサイズの決め方|画家さん向け、マットの抜き寸と見映えの良いマット幅を解説

額装するときのマットのサイズでお困りの方へ。

素敵な絵が完成していざ額装…となったときに画家さんに参考にしていただけるよう、マットの抜きサイズの決め方と見映えの良いマット幅について、額装の仕事をしていた経験をもとに解説します。

額装にこだわりたい方の為に、カラーマットやダブルマット、面金加工のマットのサイズを決める際に気をつけることなども丁寧に説明していきますね。

マットの選び方はこちらで詳しく説明しています。

額装についてはこちらの記事をどうぞ

額装マットの抜きサイズ

額装マットは絵の端から端までのピッタリサイズに抜くのではなく、絵より小さめの抜き寸にしてマットが絵の内側にかかるようにする方法と、マットは絵にかからないよう絵より大きめの抜き寸にする方法、例外的にマットを抜かない方法もあります。

絵より小さめの抜きサイズ

額装マットの抜きのサイズはミリ単位で測りますが、実際に抜いてもらうと1ミリ程度の誤差が出ることはよくあります。

絵や紙がわずかに歪んでいる場合もある為、マットが絵にかかるように抜く場合はあまりギリギリのサイズで抜かず、4辺ともそれぞれ絵の内側に5mm程度かぶさるような計算で抜きサイズを決めると失敗がありません。

ポストカードくらいの小さな絵の場合は様子をみて3mm程度にするのも良いでしょう。

  • 抜き寸=絵のサイズ-10mm
  • 小さな絵の抜き寸=絵のサイズ-6mm

これは絵に合わせてマットの抜きサイズを決める方法です。

絵を描く前などに額縁のサイズに合わせてマットの抜き寸を決める方法は、後述のマット幅の項目を参考になさってください。

絵より大きめの抜きサイズ

絵の端がまっすぐ直線状にそろっている場合、マットが絵にかからないように抜くには、4辺とも絵の外側5mm程度で計算します。

  • 抜き寸=絵のサイズ+10mm
  • 小さな絵の抜き寸=絵のサイズ+6mm

背景を部分的に白く残した絵の場合などは、描かれている部分より大きめにマットを抜きますが、基本的に目で見て抜きサイズを調節し決めます

額縁屋さんなどの店頭で、実際に絵にマットのコーナーサンプルをのせて見映えの良い位置を探します。

お店の人は慣れているので、難しい場合はお店の方にお任せしても良いと思います。

ECサイトで購入するなど、手元にマットのコーナーサンプルがない場合は、画用紙でもコピー用紙でも良いので、絵のまわりにかぶせてみるとある程度のイメージは掴めます。

ダブルマットの抜きサイズ

額装をダブルマットにする場合、下の段のマットは前述のサイズの出し方で大丈夫です。

上の段の抜き寸の目安はこんな感じです。

  • 大衣サイズまでの額縁 下の段の抜き寸+10mm
  • 大衣サイズより大きい額縁 下の段の抜き寸+12~14mm

上の段はあまり広めにとると間延びして不細工になるので気をつけましょう。

抜きのないマットが合う額装

多くの額装ではマットを窓の様に抜きますが、例外的にマットを抜かず、マットの上に作品等をのせて額装する場合があります。

例えばボビンレースやパピルスなど、端まで見せた方が良い場合です。

マットは抜かないと意外に重たいので、パピルスなど大きめの額装の場合は額縁がやや重くなります。

額装マットの幅のサイズ

マット幅の見映えの良いサイズは、絵の大きさや額縁の大きさで変わってきます。

基本的には絵や額縁が小さいほどマット幅のサイズは狭く、絵や額縁が大きくなるにつれてマット幅も広めにすると良いです。

ここでは一番オーソドックスで何にでも合いやすいマット幅の例をご紹介しておこうと思います。

  • 八つ切サイズの額縁 マット幅45mm
  • 太子サイズの額縁 マット幅50mm
  • 大衣サイズの額縁 マット幅55mm
  • 半切サイズの額縁 マット幅60mm
  • 三々サイズの額縁 マット幅65mm

必ずしもこれがベストというわけではありませんが、大体このくらいにしておくと自然な感じになります。

額縁を規格サイズの既製品にする際にはこのマット幅を目安に、近いサイズで抜くと良いです。

額縁をオーダーメイドにする場合は

額装マットの外寸=抜き寸+(マット幅×2)

このマットの外寸がオーダーの額縁のサイズになります。

見え方の傾向としてマット幅が広いと高級感が出るため、小さな絵にうんと広いマット幅でサイズの大きな額縁に額装するという方法もあります。

額装マットを楕円に抜くときのサイズ

額装マットは必ずしも四角窓ではなく、楕円やハート形など特殊な形で抜く場合もあります。

詳しいことはお店に確認が必要ですが、ここでは楕円マットについて簡単に説明しておきます。

楕円マットの抜き寸は、楕円の縦横の直径を決めて注文します。

このとき四角窓と同じようにマット幅の直径を指定してしまうと、四隅のマットの余白がかなり広くなってしまい、絵が小さく見えてしまう場合があります。

楕円マットの抜き寸の直径は四角窓よりも大きめにするとバランスが良くなります。

  • 太子サイズの額縁 楕円の直径に接する位置のマット幅40mm

目安ですので特殊な抜き寸はお店の人と相談か、実験的に注文して実物を見てみましょう。

マットのサイズを決めるときの注意点

額装マットの抜き寸、マット幅ともに、サイズを決めるときに注意しておくことがあります。

額装マットの抜きサイズの注意点

額装マットの抜き寸を決めるときに特に注意が必要なのは面金加工とカラーマットです。

面金加工のマットサイズの注意点

通常、マットを抜いた断面は斜め45度にカットされているのですが、面金はこの斜面にかぶせるようにセットされます。

つまり面金加工を施すと、指定したサイズよりも実際に出来上がってくるマットは数ミリ内側に入り込み、抜き寸は小さくなります。

そのためマットが絵に多くかぶさることになるので、予め面金の幅(3~5mm程度)も考慮してマットの抜きサイズを大きめに決める必要があります。

細かなことがややこしいと思われたら、お店の方に相談しておまかせしてしまう方が安心です。

カラーマットのサイズの注意点

カラーマットの抜きの断面は通常白く、色がついていません。

そのため、カラーマットは遠目で見ると、実際のマットの抜きの位置よりも外側に抜きがあるように見えます。(紙が白く、絵より大きめの抜きサイズにした場合は特に顕著になります。)

またダブルマットでライン状に色を見せたいときは、ホワイト系のマットを2枚重ねるときと同じ感覚でサイズを決めると、色のついたラインがかなり細く見えてカジュアルになりすぎるため、上の段の抜き寸をやや広めにとると見映えが良くなります。

カラーマットの上段の抜き寸は 下の段の抜き寸+14mm

あくまでもラインを見せるものなので、額縁のサイズによって広くとる必要はありませんが、小さな額装の場合は、様子を見ながら幅をやや狭くしても良いと思います。

額装マット幅のサイズの注意点

額縁は表面のアクリルや作品が抜けないよう額内に収めるために、表側に「かかり」という出っ張った部分があります。

これはデザインにもよりますが大体5~7mm程度ありますので、マット幅の外側5~7mmは実際はかかりにかくれて見えなくなります。

また、合わせる額縁の色や幅によっては目安のマット幅通りにすると間延びして見えてしまう場合があります。

幅広の額縁でマット幅と額縁の幅がほぼ同じという場合に起こりやすいです。

マットの抜き寸や幅を決めるときには出来るだけ額縁も一緒に合わせてみて、実際の見え方も確認すると納得の仕上がりになります。

サイズの誤差について

実物を見たわけではないのですが、私の勤めていた会社ではマットは機械が切っていたそうですが、指定したサイズと実際に出来上がったマットの抜き寸にはわずかな誤差(1mm程度)があることもありました。

これは私個人としては殆ど気になりませんでしたが、ポストカードの額装を希望されたお客様には満足していただけなかったという苦い思い出があります。

小さな額装の場合にはミリ単位のズレが見え方に影響しますが、機械でカットしても誤差は0にすることはかなり難しいようで、店頭でお店の方にカットしていただく場合は慣れている方でももっと難しいと思います。

マットの抜きサイズにはわずかな誤差が生じるものという心づもりはしておいた方が良いでしょう。

額装マットが急に必要になったら

額装マットは直接ショップに買いに行っても、カラーマットや面金加工などの特殊なもの、サイズの大きなものなどは取り寄せで1~2週間かかると思いますので、日にちに余裕をもって注文しましょう。

ホワイトやアイボリーなどよく使われるものについては店頭でも在庫しており、その場でカットしてもらえる場合もあります。

カットには15分から20分ほど時間がかかります。

私の場合は、売れた絵をお客様に送るための額とマットをECサイトで購入したものの、マットの抜き寸を間違えて注文してしまい、絵と合わないけどお客様への納期が迫っていたときに店頭でマットをカットしてもらい、事なきを得たことがあります。

そのとき、店頭でカットしてもらえるか問い合わせの電話をショップに入れ、そのままマットの種類と外寸や抜き寸も伝えておいたので、私がお店に着いたときにはマットは綺麗にカットされ、手提げなども用意されていて待たされることなく、スムーズに持ち帰ることが出来て本当に助かりました。

額装マットのサイズ まとめ

一般的な額装でシングルマットにする場合は、ご紹介したサイズ感で注文すればECサイトで購入してもあまり失敗はないと思います。

ダブルマットやカラーマット、面金など凝った額装をご希望の場合や仕上がりの完成度が気になるという方、特に初めて額装される方は、店頭でサンプルを実際に手に取ってお店の方と相談しながらサイズを決める方が安心だと思います。

ECサイトで購入したいという方も多いと思いますが、本音を言えば額装って結局は見た目が命ですから、マットに限らず額縁も初めの1回目だけは店頭で確認して購入してからの方が、イメージしやすくてオススメですよ。

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ミラデザイン画家
似顔絵肖像画を描いたり師匠のアシスタントをしながら制作活動をしています。好きな画材はポスターカラー、不透明水彩、日本画の絵の具。琳派とヨーロッパアンティーク風の絵が好きです。画家活動や画廊で長く働いた経験から得た、絵の描き方やリアルなアートの話のほか、生きづらくて苦しんだ後にたどり着いた、前向きでラクな考え方や肩の力を抜いた楽しい生き方についても書いています。