絵やイラストを描いている、上手ということを知られると「○○さんって絵描いてるんだよね?これ描いてくれない(無償で)?」的な依頼をされることが起こりがちです。
一生懸命描いているのに無償?
どれだけ時間がかかるのか、わかって言ってます?
材料もこちら持ち?
ていうか、基本的に有償で依頼受けてるんですけど…。
などなど、無償依頼を持ちかけられてビックリすることもあるかと思います。
絵を一生懸命描いていると一度は経験するであろう出来事ですが、断りたいと感じる絵描きさんは少なくないと思います。
無償とか無償同然の料金でイラストを依頼してくる人へのカドの立たない断り方や対処法について、お話しします。
もくじ
イラストを無償で依頼する人の心理
そもそもイラストを平気で無償(同然)で依頼してくる人って、絵やイラストを価値あるものと思っていません。
お絵描き、またはその延長。
悪気があるわけではないのですが、その人の中では絵やイラストはそういうものなのです。
悪気なく、イラストに価値があると思っていないので、平気で無償で依頼が出来ますし、依頼話を持ちかけられた絵描きが困った顔をすると、「カンタンでいいから」などとまた平気で言ってきます。
それの意味するものは何か。
絵描きを完全にナメている。(悪気なく)
ですので、絵画やイラストを無償で依頼してこられたら、まず「ああ、自分はこの人にナメられているんだな」と自覚したうえで対応をしましょう。
イラストの無償依頼を受けるデメリット
その場のノリで「良いよ」と言ってしまった。
友達や会社の人、親戚などで断りにくく、嫌なのに無償依頼を受けてしまった。
絵描きをナメている相手からの依頼を受けてしまうと、無償でイラストを描くだけでは済まなくなる可能性が高いです。
相手をナメているとき、人は平気で無茶なことを言うものです。
材料代は作家持ち
絵を描く材料はアナログイラストの場合は紙と絵の具、大した金額でもありませんが、無償で描く上に材料も作家側がサービスで提供することになります。
資料をくれない
イラストの依頼は、SNSのアイコンだったり、卒業や退職などのタイミングでプレゼントするための似顔絵などであることも多いと思います。
似顔絵の場合とてもよくあるのは、服やポーズの指示あり(悪気なく)でも顔写真しかもらえないというパターンです。
もちろん資料は作家が探して用意することになります。
たとえ相手に資料を用意してほしいと伝えられたとしても、普段絵を描いていない人はなかなか良い資料を探してくることが出来ません。
結局自分で探した方がマシだったりするものです。
納期が短い
イラストが価値あるものと感じていない相手は、絵を描くことに時間を要するということにも気付いていなかったりするもの。
よって納期に余裕がないこともあります。
私はずいぶん前に無償で子供たちの施設のために絵を描いたことがありましたが、B2サイズで3枚を10日ほどで描いてと言われ、せめて2枚にしてくれと言った覚えがあります。
その頃はまだ絵の仕事はしていませんでしたし、無償でも構わないと思って喜んで描き、お渡ししたあと子供たちも喜んでくれたことを聞いて嬉しかったのですが、なかなか無茶を言ってくれるなぁと思いました。
修正を求められる
これは私の場合はありませんでしたが、平気で依頼してくる人は修正も平気で求めてくる可能性は高いと思います。
特に似顔絵系は似てるかどうかを気にしますし、たとえ500円でも払ったら、人は「お金を払った」という気持ちになるものですから、気に入らないところがあれば修正してほしいと言われることもあると思います。
イラストの無償依頼の断り方
自分も納得の上で無償でイラストを描くのであれば、何の問題もないと思います。
でも「嫌だな」と思うときは、カドを立てずに断りたいもの。
イラストを依頼してくるひとは「ちょっと描いてもらえない?」程度のノリでくる場合が多いので、私は速攻で「予算はどのくらいで考えていますか?」とこたえます。(あくまでも穏やかに)
「予算」という言葉で「私は絵は無償では描いていません」ということをやんわりと相手に伝えることが出来ます。
予算という言葉にビックリして「いや、そんな大したものでなくていいから、カンタンに描いてほしいだけ」というような返事が返ってきたら、「カンタンっていうのはかえって難しい」のだと伝えます。
私の場合は似顔絵は企業さんを通して販売していただいているので、「私は仕事として絵を描いていて、おひとり〇万円からなんです」と続けます。
そこで相手の顔がくもったら、「私は無料では出来ないけど、もしカンタンなもので予算も出来るだけ安くしたいなら、ココナラとかで探すと良いですよ」と優しく教えてあげると相手もそれ以上は言ってきません。
たとえムカッときても相手に悪気はないですし、めんどくさいのでケンカにならないよう、やんわりと断る方向に持っていきます。
企業案件の仕事を少しでもしている場合は断りやすいですが、そうでない場合もハッタリでも良いから「実は今SNSで有償依頼がたくさん来ているので余裕がないんです」などと言って断ってしまうとか、場合によっては払ってもらえるかもしれないので、希望の料金を伝えるのも良いと思います。
イラストの依頼を無償で受けてしまったら
この記事を読んでいる段階で、すでにひどい依頼を受けてしまっているという場合、不本意だと思いますが、勉強代と思って頑張るしかないかなと思います。
ただ、修正を平気で言ってくる場合などは「無償(同然)なので、これ以上は出来かねます」とハッキリ伝えて大丈夫ですよ。
引き受けてから「やっぱり有償で」とか、後から値段を上げることはイラストに限らずトラブルの元になりますので、やめておいた方がいいと思います。
一度苦い経験をすれば、次からはきっと上手に断れます。お疲れ様です。
イラストの無償依頼を受けないために
とりあえず、無償(同然)でイラストの依頼は受けないと決めているなら、絵の依頼話を持ち掛けられたら出来るだけ早い段階で、無償では出来ないことを伝えることだと思います。
依頼されることに慣れていないときに「じゃあ、いくらで?」と言われて困ったら、後で後悔しないように「改めてお返事させてもらえますか」と一旦話を預かり、即答を避けましょう。
出来れば当日中、翌日までにお返事すればいいと思います。
ただ、金額を聞いてくれたということは、有償でも注文してくれる可能性があるので、返事は早めにした方が成約率は上がると思います。
イラストを無償で依頼してくるというのは、遊びや趣味で描いていると思われていたり、相手が図々しかったり、どちらにしてもナメられています。
いちいち腹を立てても仕方ないですから、ニコニコしながら「有償(こちらの希望価格で)なら喜んでお描きしますよ」という毅然とした対応をすると良いと思います。
相手の程度が低すぎる場合は、相手にしないという選択も必要です。
企業案件で絵を描いたり、実際に絵の販売実績を増やしていくにつれて、そういう話はあまり来なくなりますから、絵の活動を頑張るのが一番の対策かもしれません。
追記:師匠の対応が目から鱗だった件
ここからはイラストの無償依頼の対処法に関する追記となります。
第一弾の記事として投稿した直後から沢山の方に読んでいただき、嬉しかったのと同時にそれだけみんな困っているんだなと実感し、師匠にLINEで話しましたら、思いもよらない返事が返ってきてとても勉強になりました。
20代前半でデザイナーとして独立し、今日までデザインと画業で生きてきた一人の先輩の言葉として、私一人だけ勉強になるより、ここまで丁寧に読んでくださったあなたにも、師匠が私にしてくれた話をご紹介したいと思います。
う~ん、先生の場合の「描いて」はもっと質の良いケースなのでは…
職場とかで頼まれるのは、ただ便利に使われているだけじゃないかな…
その場合、引き出し(絵やアイデアの種類)が沢山あるのです!
何段目の粉本(ふんぽん)は軽く描けるかな~とか
粉本というのは日本画でいう下図のことです。
絵を1枚完成させて粉本の役割が終わるという画家さんもいらっしゃるかと思いますが、狩野派のように粉本をアレンジして活用することで、チームで数多くの案件をこなした例もあります。
師匠も私も作った粉本は大切に保管しており、アレンジして使っています。
(自分の仕事のための)広告(宣伝)に利用します
たしかに、師匠は絵一枚のご縁から店舗プロデュースなどの大きなデザインの仕事をもらってくるのが得意です。
ふむふむ…
「カンタンに描いて」の正体はたいてい似顔絵です
何もかも必死にせずポジティブに考え、明日に繋げます
似顔絵もクロッキー調の軽い技法で
なるほどなぁ
私の今までの経験だと、その後の仕事に繋がるとかなさそうな感じの依頼だったのですが
絵描きさんも昔は席画があります!
大概は色紙ですが、お客様に喜ばれます
そのための練習もしていました
師匠のもう一つ上の世代、戦前のお母様の時代には画会というものがありました。
画家はあちこち地方のお寺や旅館などに赴き、その地域のお客様を集めて屏風などの注文をとる画会をひらきます。
そこでもらった注文を画室に帰って制作したのだそうです。
新聞社なども取材に来るため、盛況だったようです。
席画とは、その画会のときにお客様にサービスで描いた絵のこと、今で言う「ご来場プレゼント」のようなものです。
つまり、タダであげられる描き方も持っておけばいい、ということでしょうか
そのように色々の手を持てば便利いいという話です!
反対意見ではないです!
十人十色で世の中はいいのです!
ということでした。
ケースバイケースでそういう対応、そういう考え方も大いにアリなんだなと私は思いました。
そして色んな意見があるだろうことは予想はしていますが、「私はこういう絵を描く画家です、これしか描きません」というのでなくて、サラッとサービスで描ける手や用途に合わせた軽い描き方の絵も持つことが、絵の技術の向上や応用力にもつながるのではないか、と思いました。
私は時々百貨店の絵画フェアのような即売会も見に行きますが、販売されている竹内栖鳳の掛け軸なんて見ると、美術館で見る作品と全然違ったりします。
手を抜いているという表現は違うかもしれませんが、掛け軸の注文品の値段に見合う画題と描き込み方で描かれているな、というのがよくわかります。
そんな有名な画家ですら、そうしていくつも手を持っているのです。
私ももっと頭をやわらかくしたいなと思いました。
イラストの無償依頼についてはパッと切り捨ててしまう方がいいのか、その後の縁を育てるための布石にしてしまうか、そういう利害をよそに楽しく描いて喜んでもらえればそれでいいのか、その人その時によって判断の変わることだと思います。
私なりの断り方と師匠の縁を繋ぐ考え方をご紹介しました。
あなたはどうお考えになったか、とても気になります。
僕の場合はメリットを先に考えます!
「カンタンに描いて」と言う中に敬意が少しでもあれば、描いて渡します
必ず何かの繋がり(ご縁)になるからです!