画家活動をしているとWEBサイトやSNSでの発信は必須なのですが、発信するなかで「顔出し」という壁にぶつかることがあります。
「わたしは絶対顔出しNG!」と決めている作家さんもいれば「本当は顔出ししたほうが良いとは思うけど怖い」と考えている作家さんも多いのではないでしょうか。
いくら発信しているからといっても、(自分は芸能人ではなく絵を描いている普通の人)と考えると顔出しに躊躇してしまいますよね。
私も顔出しについては元々しない方針でしたが、やっぱり出さないといけないのかな…と恐る恐る一度出したのをやっぱり嫌だと引っ込めてみたり、色々と長い間迷いましたが今はSNSでは顔出しせず、自分のサイトと講座のプロフィール用としてだけ写真をのせています。
この記事では画家さん(イラストレーターさん)をはじめとするアーティスト、クリエイターが顔出しするメリットやデメリット、私が顔出しすることにした理由、顔出ししてわかったことや良かったこと、プロフィール写真を撮るときに気を付けたことについてお話ししてみようと思います。
もくじ
顔出しするデメリット
画家さんが顔出ししたくないと思う原因である顔出しのデメリット。
身バレ
個人の特定
顔出しすることで個人が特定される可能性があります。
誰でも目にすることの出来るネット上に顔出しするというのは、職場や友人、地元の人などに知られずに画家活動をしたいと思っていても、何かのキッカケで身バレしてしまう可能性があります。
プライバシーの侵害
多くのフォロワーのいるSNSで頻繁に顔出しするなどして顔をおぼえられてしまうと、芸能人と同様に外出時などに気が付かれ、プライベートな時間や空間を侵害されてしまうということが起こる可能性があります。
安全面のリスク
ストーカー
顔出しすることをキッカケとしたストーカー行為が起きる可能性があります。
特に若い女性の画家さんをターゲットにしたギャラリーストーカーという問題が話題に上っています。
ハラスメントや嫌がらせ
私がSNSで顔出しをしないことにしている理由のひとつでもありますが、顔出しするとハラスメントやセクシャルな嫌がらせを受ける可能性があります。
可能性というか実際の経験ですが、私の場合はXで顔出しすると毎回必ずエロ垢がとんできたり嫌がらせがありました。
顔出しされている方は少なからずこういった嫌な思いを経験されているのではないかとも思います。
SNSの場合は表からは嫌がらせの実態が見えない場合もあります。
容姿に対する批判や偏見
生まれ持った外見や性質、ファッションなどの容姿に対する遠慮のない批判や誹謗中傷、「女性はこうあるべき」「画家はこうあるべき」「年齢にふさわしくない」といった思い込みからくる偏見や批判を受ける可能性があります。
「画家はこうあるべき」というこだわりは、実際に絵描き界隈にいても度々SNSなどで飛び交っている話題を目にします。
ブランディングへの影響
これは顔出しのデメリットだけでなくメリットにもなり得るものですが、アーティストが顔出ししたり発言することで絵の世界観といったブランディングに影響があります。
「絵は好きなのに作家を見てイメージが壊れた」という反応を持たれる可能性もあります。
ストレス
匿名という立場からの遠慮のない誹謗中傷や嫌がらせ、自分を棚に上げた容赦ない批判などにさらされることによってストレスを受ける可能性があります。
顔出しのメリット
顔出しするデメリットについて考えるとなかなかひどいと思ったりしますが、一方で顔出しによるメリットもあります。
信頼感の獲得
信用・信頼・安心感
これは私が顔出しすることにした理由でもあるのですが、顔出しをすることで自分がどのような画家か一目瞭然となり、アーティスト自身についても発信内容についても透明性が高まり、信頼感を強化することができます。
WEB上で絵画などを販売したい時やメルマガなどを発行するとき、企業相手の仕事を受けるときなど、顔写真があるかないかで安心感が違います。
親近感
言葉のみ、絵のみといった発信でなく顔出しもすることで「この人が書いた(描いた)のね」という親近感を持ちやすくなります。
ブランディング
作品や発信内容に加え顔出しをすることで、アーティストの持つ世界観を強化したり一貫したブランドイメージを打ち出していくブランディングも可能です。
顔出しすることで作品や発信内容だけでなく画家自身の人柄や背景などにも興味を持たれやすくなり、記憶してもらいやすくなります。
ブランディングが上手くいくと人気にも良い影響が期待されます。
コミュニケーションの強化
顔出しできる場合、ファンやお客様との交流がメールやDM、LINEといった文字での交流にとどまらず、ZoomやYouTube、ニコニコ動画などでのライブ配信などでの交流も可能になり、コミュニケーションの機会や可能性がひろがります。
チャンスが増える
顔出しをどこまでOKにするかにもよりますが、この画家さんは顔出しOKということが分かれば他のアーティストとコラボという形で対談などの動画配信企画が出来たり、テレビなどメディアに取り上げられるチャンスが増える可能性があります。
メディアへの露出が増えることで新しいファンの獲得も期待できます。
わたしが顔出しした理由
はじめに書いたように、私は元々は顔出しはしたくない…というより絶対にイヤという気持ちがありました。
それでもやっぱりなにかしら姿は見えた方が良いのだろうと思い、はじめは顔が見えそうで見えない角度から撮ってもらった写真を使ってみたり、SNSではマスク着用の画像をポストしたこともありました。
何年か色々迷いましたが、必要最小限の範囲でマスクなしで顔出しすることにしました。
私が顔出しすることにした理由は、先ほども書きましたが「信用・信頼・安心感」のためです。
ブログが成長するにつれて「ミラって誰?」という反応があったり、メルマガを配信するにあたって「うさんくさい、何か売りつけられる、詐欺?」みたいな不安を持たれる方も少なからずいらっしゃるように感じましたし、今後も絵に関わる活動を積極的にしていきたいと考えたときに(そろそろ顔出しする時期なのかもしれない)と思いました。
それからほどなくして水彩画の講座をスタートすることになり、顔出しせずに始めるという選択肢はありませんでした。
顔出しして良かったこと
勇気のいることではありましたが実際に顔出ししてみると、良かったと思うことはそれなりにありました。
安心感や信用
顔出しのメリットのところにも書きましたが、一番の目的である信用・信頼、そして安心感は多少アップしたのではないかと思います。
私の場合はMIRAという作家名で活動していることもあり、ブログで色々書いていても(匿名で好き勝手書いている)的な感想を持たれることも、ひょっとしたらあったかもしれません。
私の書いた記事への異なる意見や好き嫌いはあったとしても、顔を出して書いているという一定の評価や信用は得られるのではと思います。
責任感
何かあればアカウントごと消せるSNSと違い、自身のホームページは簡単に消すわけにいきませんので、顔出し云々の前から自分ではそれなりに発信内容に気を付けるようにしてきたつもりではありました。
自分で好ましくない表現などに気が付けばこまめに修正するなど対処してきましたが、顔出ししたことによってこれまで以上に自分の発言に責任を感じるようになりました。
これはプレッシャーではありますが、良いプレッシャーだと思います。
自信
顔出しには怖さがありましたが責任感をもって発信していくことで、わずかなりと自信になったように思います。
たとえばXは匿名での批判が日常的に飛び交うSNSであり、毎日のように辛辣な言葉を目にする機会があります。
ブログが成長しメルマガも配信するようになると批判の言葉を目にしたときに(これって私のこと言ってる?)という自意識過剰な不安をおぼえることもありましたが、顔出ししてからは(私は顔出しして活動している。匿名で顔も隠して何かあればすぐ逃げられる場所から発せられた言葉には、傷つかなくていい。)と思えたことで気持ちがラクになり、嫌なものを目にしても受け流せるようになりました。
以前から顔出しや本名で活動している他の画家さんたちには、絵柄の好みや考え方の違いなど関係なくリスペクトの気持ちを持っていましたが、自分が顔出ししてみてその気持ちはより強くなった気がします。
顔出ししてみてわかったこと
SNSでの顔出しとはまた別ですけど(Xが特殊過ぎる)、自分のプロフィール画像として顔出しした実感としては、あんまりみんな私の顔なんて見てないってことでした。
顔出ししたからといって信用されてメルマガの登録爆上がり!みたいなことも別にないですし。
拍子抜けするくらい、自分が気にしているほど人は人の顔に興味なんかないっていうのはひとつの発見でした。
ただ、見た人から「ブログに厚みが出た」と言ってもらえたことはありました。
発信に重みが出たということだと受け取っています。
はじめての講座を実施したときも受講生さんは予め私の顔を知っているので、オンラインでも安心して受講していただけたようでした。
画家のプロフィール写真の撮り方
画家活動でのプロフィール用の写真、たとえばビジネス界隈では「絶対カメラマンや写真スタジオできちんとしたものを撮ってもらったほうが良い」と言われていますが、プロのカメラマンには及ばなくてもPhotoshopで編集すればある程度どうにかなると思い、私はアトリエで自分のiPhoneで撮りました。
何枚か撮ってもらい、画像を選ぶときに気を付けたことはいくつかあります。
顔を隠さない
顔出しするなら中途半端な出し方をしないことに決めていました。
以前は姿は映っていても顔はわからない角度とかマスク姿の写真を使ったこともありますが、「顔出ししたくない感」がにじみ出ていてあまり良い印象でなかったと思うからです。
でも本当は顔出ししたくないという気持ちがベースにあるので、代わりにとった方法は横顔にする、正面から満面の笑顔で撮影することでした。(往生際がわるいよね)
これってどちらもしっかり顔が映っているにもかかわらず、ふだん正面から見る顔とちょっと違いますよね。
証明写真を撮るときって笑顔はダメと言われるのは、笑顔になると普段の顔がわからないからです。
マスクで顔を隠したり無理やり変な角度から撮影したりせず、堂々と正面から笑顔で撮った方が感じが良いし、たぶん道ですれ違っても気が付かれないんじゃないかな。
ビジネス用ならもっと自然な微笑みのほうが良いかもしれませんが、画家のプロフィール用ならもう少し自由にして良い気もしました。
何でもやってみないとわからないので、そのあたりは一定期間様子を見て変えた方が良いと思ったら変えれば良いかと思います。
背景には気を付ける
ビジネス用の写真の場合は背景は白とか何もなしっていう感じですが、私たちは画家なので絵と一緒に映るのが説得力があって良いですよね。
私の場合は絵を描いているところと、普段こんなところで絵を描いてるよっていうのがわかるようなアトリエの背景が映るようにして撮影してもらいました。
アトリエのほかには展覧会場で撮影した写真、ライブペインティングが出来るアーティストさんはパフォーマンス中の画像などもインパクトがあると思います。
掲載してしばらく経って感じているのは、自分のサイト用には自分で考えて撮ってもらった画像でかえって良かったと思った一方で、講座のサイト(ストアカ)のアイコンとしては背景のない画像の方がスッキリして良いかも(アイコンって小さいし)と思いました。
講座用は何かの機会に撮り直すかもしれません。
服装とブランディング
服装は画家の場合は清潔感さえ出ていれば何でもいい気がします。
ただ、服装を含めた作家のビジュアルもブランディングになる場合があります。
私の場合は元々ファッションも好きなので、どうせ写真を出さないといけないなら自分らしくて作品の世界観ともつながるような服にしようと考えました。
ブログを始めた当初は「リアル系似顔絵作家」であり「吉祥画」を描いていますというのがわかりやすい実績だったのですが、実際はどちらも別名義で作品を販売しているので、MIRAとしての絵のイメージがメインに伝わるように選びました。
たとえば吉祥画をメインに伝えようとしたなら着物姿を選んでいたかもしれません。
どんな服装でも構わないと思いますが、絵を販売したい作家さんの場合は絵の価格面から考えても、あまりラフすぎない方が良いんじゃないかと思います。
加工しすぎない
画像の加工については、他のアーティストやデザイナーさんなどのモノクロ写真を見てカッコいいなと以前から思っていたので、彩度を落としました。
服装のところでラフすぎない方が…と書きましたが、たとえばTシャツにデニムにエプロンといった服装の場合でも、モノクロに加工してみるとちょっとラフさが緩和されて不思議とお洒落に見えたりするのでオススメです。
ライティングに気を配らなかったので逆光になってしまった顔を明るく調整し、少し肌補正をしました。
肌補正は少しするだけで表情も明るく見えるので、老若男女問わずオススメです。
プロフィール用の画像では、別人のように顔の変わる加工アプリは使わない方が良いかなと思います。
顔出しにストレスを感じたら
基本的にネット上に出した画像というのはデジタルタトゥーと呼ばれるように完全に消したり回収することが難しくなる、という前提があります。
それでも色々考えて顔出しすることにした後で、やっぱりストレスに感じる場合はそこでやめたら良いと思うし、私もずっと顔出しを続けるかどうかわかりません。
「顔出し良いよ!顔出ししなよ!」みたいにオススメするつもりもありません。
顔出しに限らずネットで発信していると何らかのストレスが強くかかることって普通にありますよね。
そんな時は自分ひとりで抱え込まず、誰かに相談してみてください。
画家仲間がいなくてひとりで活動している人も多いですが、そういう画家さんも気軽に相談してもらえるように、私のメルマガ内では相談や質問も受け付けています。
結局、画家は顔出ししたほうが良いの?
画家活動をするときに顔出ししたほうがプラスになる面はいくつもあると思いますが、嫌なのを無理に出す必要はないですし、ネット上に顔出ししなくても人気の画家さんはたくさんおられます。
顔出しをする代わりに本名で活動するというのも信用・信頼は得やすいと思いますし、わかりやすい実績がたくさんあれば顔出しはしてもしなくてもどちらでも良いと思います。
ただ、顔出しするなら堂々と出すほうが感じが良いし、自分も晴れ晴れとしてふっ切れましたよ。