補色や反対色とは何なのか。
頭で理解するだけで終わってしまうと勿体ないので、この記事では補色や反対色の説明と、実際に絵画やイラストを制作する際にどう活かしたら良いのかという話をしようと思います。
もくじ
補色と反対色の違い
赤・青・黄色などの色彩を虹のようなグラデーションになるように円形に配置した図を色相環と言います。
色相環にはマンセル表色系、オストワルト表色系、PCCSなど、1種類だけでなく有名なものがいくつかありますが、見た目のグラデーションや配置的には基本的にはよく似ています。
この色相環上で正反対の位置にある色彩同士を補色と言います。
補色同士の絵の具を混ぜると概念上は無彩色になります。
(実際に絵の具などで描いていく場合は必ず誤差が出るので、色味を感じるグレーになります。)
補色というのは概念としては1色につき1色だけということになりますが、色相環の種類によって実際は少しずつ色が異なります。
色相環上の隣り合った色彩同士のことを近似色と言います。
よく似ている色ということですね。
補色と補色の近似色のことをまとめて反対色と言います。
ここからは補色と反対色を実際に使うときの話をしていくよ
補色・反対色のメリットとデメリット
補色・反対色を使うとどんな良いことがあるのか見ていきましょう。
補色・反対色を使うメリット
補色や反対色になる色は全く違う色同士なので、同じ画面上にあると目立ちます。
- インパクトがある
- 華やぐ
- 元気が出る
- アクセントになる
- 動きやリズムが生まれる
- ボリューム感が出る
- 混色で暗いところを表現できる
近似色を使って絵を描くと画面が良くまとまってキレイに描けるのですが、近似色ばかりだとおとなしく寂しい雰囲気になることもあります。
そこで補色や反対色の出番。
補色や反対色を入れるとパッと目を引くので、画面が生き生きしてきます。
インパクトがあるので、ポイントに少量だけ使っても効果的なアクセントに。
画面にメリハリがついて存在感やボリューム感が出てきます。
なんとなく絵が弱いな…と感じるときには補色や反対色を上手に使うことで絵に元気が出てきます。
また、補色は混ぜるとグレーが出来ることを利用し、影の部分を表現するのに使うことが出来ます。
メインの色の影の部分に黒を混ぜることで影は表現出来ますが、黒の代わりにあえて補色を使うことで色味や表情を感じる影を表現することが出来ます。
実際に絵の中に描き込んでいく場合は、周りや全体の色味とも合わせながら補色のみが浮かないように注意しながら描いていきます。
補色・反対色を使うデメリット
補色や反対色は、インパクトを出すために理屈で使おうとすると、実は失敗しやすい面もあります。
- ケバケバしくなる
- ハレーションを起こす
- キレイにまとまらない
補色や反対色は目立ってインパクトが出る配色なだけに、一歩間違うとケバケバしくいやしい雰囲気にもなってしまいます。
また、選んだ色によっては補色同士の彩度と明度が近すぎて目がチカチカするというハレーションを起こしてしまいます。
実際に絵を描くときに使うと、絵がガチャガチャして上手くまとまらないということも起こりやすいです。
補色や反対色を実際に使うときには、ちょっとした工夫が必要になるよ
補色・反対色の使い方のコツ
補色・反対色を見やすくて効果的に使うときの4つのコツについてお話しします。
セパレートカラーを使う
色のハレーションが起こるのは彩度が高く明度も近い場合なので、黄色と青紫のように彩度が高くても明度に差のある補色同士の場合にはハレーションは起こりませんが、赤と緑のような組み合わせで隣り合うと見づらくなります。
このような場合にはハレーションを起こしあう色と色の間に白や黒を挟むことで強烈なハレーションは解消します。
この緩衝材になる色のことをセパレートカラーと言います。
基本的には白や黒のことですが、金や銀でも同様の役目をしてくれます。
彩度を落とさずに補色・反対色を使いたいときの方法です。
彩度・明度を変える
これは本当の意味では補色ではなくなってしまいますが、補色同士の片方、または両方の明度を変えてしまうことで馴染みがよくなります。
彩度が高いと強烈なイメージでも、両方の色の明度を上げることで優しい雰囲気で調和します。
一方の色はそのままに、もう一方の明度をうんと下げて暗くする(または明度を上げて明るくする)と馴染みやすくなります。
色相としての補色、反対色をそのまま使わずに明度をコントロールすることで、無理なく合わせることが出来るようになります。
色の比率に気を付ける
こちらは配色についての記事にも書いたのですが、相性の良い色同士でも使う比率によって魅力的に見えたりイマイチだったりということが起こります。
補色・反対色の一方を主役の色にし、もう一方の色を主役を引き立たせるための色と考え、使う比率を調整することで配色の効果をより引き出すことが出来ます。
色彩計画を立てて使う
補色や反対色とは上手に使うと効果的である一方、行き当たりばったりで使うと失敗する原因になります。
デジタルの場合には元に戻すのは簡単ですが、アナログで絵を描いている場合は修正が出来ない場合もあるため、実際に作品として描く前にラフスケッチで色をある程度決めてから描いていくことをおススメします。
まとめ
補色は色相環の種類によって若干違いがありますし、実際の制作の際には厳密な補色というものがわからなくても良いので、なんとなく反対エリアにある色を反対色ととらえておけばいいかなと思います。
補色や反対色を彩度の高いまま使いたい場合はセパレートカラーを上手に取り込み、調和させるようにしましょう。
セパレートカラーについては誰か他の絵を参考にするよりも、身の回りにあるパッケージデザインなどを見ていくとよくわかります。
商品名などの文字の可読性を良くしながらも目を引く色の組み合わせとして、セパレートカラーを使いながら補色や反対色を使ったデザインは多いです。
どんな絵を描くかにもよると思いますが、イラストではなく写実寄りの絵画の場合には特に、明度に変化を付けることで補色・反対色としての色味の違いを活かしつつ、調和のとれた配色にすることが出来ます。
補色・反対色など色の知識をもっと身につけたいという場合は色彩検定の参考書などを読むと理解が深まります。
私は一通りサラッと勉強しておきたかったので、色彩検定の資格も取りましたが、実際の絵画の制作においては、こういったアカデミックな要素を前面に出して描くのでなく、頭の片隅にあればじゅうぶんだと思っています。
実際に絵やイラストの制作などをするときに理屈で補色などを合わせていくことも可能ですが、イメージが広がりにくくなるのではないかなと感じます。
知識として色を理解するのは良いけれど、がんじがらめになるとしんどいよ
色に関してはあまり理屈で取り組むよりも、実際に綺麗な色の組み合わせをたくさん見て知って、そこからヒントをもらってラフスケッチとして描き起こし制作に移る方が、リアルにイメージ出来て精神的にもラクだと思います。
そしてラフの段階、実際の制作の際にどうも色に元気がないと思ったときなどに補色や反対色を合わせてみたり、色が上手く合わなければセパレートカラーを使ってみようとか明度を変えてみようなど、思い出せればそれで良いのではないかと思います。
知識は実際に使えてなんぼ
せっかく勉強するなら制作に落とし込んで使おうね